【追憶の名馬面】ロジータ

3冠、それも牡馬の3冠ロードを圧倒的な強さで制した。歴史が創造された瞬間を目撃して、誰かが呟いた

この馬なら中央のGIでも…。

再び上り列車が来た。行き先は府中。今度は都会の連中にプラス、世界の連中も相手。しかし、おらが町で生まれた強い優駿。無謀だ、と嘲笑われようが、川崎、いや南関競馬を愛する人々は彼女の強さに惚れている。タフなダートを風の様に走り抜ける強さは世界が束になっても敵わない。笑わば笑え。

ジャパンカップ。イギリスのイブンベイ、アメリカのホークスターが世界レベルのペースで引っ張る流れに彼女は付いて行けなかった。前回の中山で見せた先行策も採れず、終始後方を進み、直線も前へ出る事が出来なかった。

彼女の遥か前方で死闘を演じていたのはニュージーランドからやって来たホーリックスと、中山で戦った灰色の彼だった。2頭の芦毛が叩き出したレースタイムは、2:22.2。芝2400mの世界レコードで、彼らは駆け抜けた。

世界戦は惨敗だった。世間は日豪の優駿が見せた死闘で騒ぎ、誰も南関東3冠馬の彼女に振り向かなかった。しかし、彼女には何よりも心強い南関東のファンがいた。南関のファンは、惨敗した彼女を暖かくホームへ迎え入れた。

そして挑んだ東京大賞典。大好きな南関東で彼女はいつも通り走った。直線、変わらず野崎の手綱はプランプランで、彼女の気の向くままに駆けさせた。変わらぬ強さで駆け抜ける彼女を見て、南関東の人々は南関東最強馬の称号を贈った。ハイセイコーではない。彼女こそが南関東最強馬だ!

ちなみにこの時2着に負かしたのはスイフトセイダイ。東北で暮らしていた彼は東京大賞典に挑むために、南関へスポット移籍しレースへ挑んでいた。その後、故郷の東北へ帰り一時代を築くことになるのだが、それはまたどこかで…。

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