【追憶の名馬面】サイレンススズカ

日々刻々と進む時間という概念は戻ることをしない。常に先へ進み、新たな世界を創造し続けるだけだ。

しかし、1秒、1分、1時間…歩みを止めることなく進み続ける時の流れの中で、不意に戻りたい、或いは止めたい、と願う瞬間がある。

サイレンススズカという馬がいた。キラキラと眩しい栗毛の馬体を躍動させ、誰よりも速く、ターフを駆け抜けた彼を愛する人は今なお多い。もちろん、私もスズカが大好きだ。栗毛フリークとして、彼のことを愛さずにはいられない。

1998年11月1日。スズカの時間は、ここから動いていない。彼がいた空間が時の流れを失い、もう17年余りの歳月が過ぎた。その年に産まれた赤子は、多感な高校生になり、思い思いの青春を謳歌し成長を続けているのに、彼はまだ11月2日の朝陽を見られないでいる。

高度に文明が発達している現代社会の技術を持ってしても、1998年のその日にタイムスリップすることは、まだ不可能だ。故に、彼を翌日へ誘うことは出来ない。しかし、知性を持つ人間は、彼がその日まで歩んできた足跡を、確実に辿る術を持ち合わせている。

1998年11月1日。彼がこの日を迎えるまでに辿ってきた道を、今日は振り返ってみたい。

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