生産牧場一強時代に思うこと

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今の競馬界は明らかな「一強ムード」。これに異を唱える競馬ファンはいないはずだ。どのレースの生産者名を見ても、必ずといっていいほど社台系の名前を目にする現状。それを否定するつもりはもちろんない。どの生産者も、とにかくいい馬を・・・と、死にもの狂いで努力した結果が今の日本の競馬のレベルをグンと飛躍させたからだ。しかし、過去を遡れば、いつの時代もライバル関係の構図があった。シンボリ、トウショウ、メジロ、バンブー…。

勝負の世界は優勝劣敗、弱きものが淘汰される世界であるとはいえ、一競馬ファンの筆者も今の競馬に昔ほどの熱を感じることができない。先週の京成杯も1~4着馬ノーザンファーム生産馬で、1~3着馬はすべてキャロットファーム。5着ウムブルフも白老ファーム生産と、とにかくいつも見る光景というか、相変わらず同じ勝負服ばかりで、はっきりいって社台生産馬の発表会、運動会と言ってしまってもいいぐらいである。

数十年前、ラムタラが導入されたことをよく思い出す。ラムタラの競走成績、種牡馬として日本に導入された経緯などは省略するが、この導入に深くかかわったのが、マーケットブリーダーが多く集まる日高地方の生産者たちだった。

当時、猛威を奮っていたのは、日本競馬のありとあらゆる記録を塗り替えたサンデーサイレンス産駒であり、このスーパーサイアーを導入したのが社台グループだった。このサンデーに対抗する形で迎えられたのがラムタラであり、今では考えられないが、当時は一般紙やテレビニュースでもその動向が伝えられるほどであった。(もっとも当事者はサンデーに対抗したわけではないとしているが、競馬ファンにはそう映らなかった。)

結果としてラムタラ産駒は、日本のスピード競馬に適応できず不発に終わったのだが、一強ムードに待ったをかけるべく、世界のスーパーホースを導入したその気概は、やはり評価しなければいけないのではないか。今のこの圧倒的な格差を埋めるのは、おそらく無理と言っていい。老舗の名門牧場も毎年のようにその姿を消していく現状に、待ったをかける手があるのか。日本馬のレベルアップと共に失われた代償は余りにも大きい。