相次ぐ若手騎手の引退。騎手を長く続けられない時代になった理由とは?

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今でこそリーディング争いを安定して繰り広げている福永騎手にも苦難の時期がありました。北橋厩舎に所属していた頃、そして瀬戸口厩舎のバックアップがあったころの話になります。北橋元調教師と福永騎手の対談によると、北橋厩舎には何度となく「福永を変えろ」というクレームが馬主さんから来ていたそうです。

それを「あと1、2回はユーイチを乗せて様子を見てくれませんか?」と弟子をかばってくれたそうです。もちろん当時の福永騎手はリーディング争いとは程遠い状態。馬主さん・オーナーサイドからすれば、当時の関西なら武豊騎手など有力どころが乗ってくれるなら即座に変えたかったことでしょう。

とはいえたいていの馬主さんはそれで「まあ、わかったよ」という形で引き下がってくれたそうです。しかし、瀬戸口厩舎にはもっとすごいクレームが来ていました。福永騎手がいる目の前で「福永を降ろせ」と言われたそうです。福永騎手自身も、不甲斐ない結果をその馬では出していたそうで、仕方ないとも思っていたようです。

ところが、瀬戸口調教師は北橋調教師よりも強く反発してこう言い放ったそうです。「だったらウチに預けている馬は、他に移してください」と。実際にそう言って転厩になった馬もいたんじゃないですか?と福永騎手が聞いたところ「いや、そこまで言うとたいてい納得してくれるか我慢してくれたよ」と返事が来たとのこと。

目の前で「お前には乗せたくない」と言われる心境は、本人にしかわからないでしょうが、サラリーマンとは違った「自営業」の側面があるなと思いました。

武豊騎手は「ジョッキーはムチさえあればどこででも乗れる。国籍も国境も関係ない」と武豊TVで以前話していました。
とはいえ、このコメントは裏を返せば「ムチがあっても結果を出さなければどこに行っても乗せてもらえない」ということになりますよね。
それだけ厳しい世界ということですし、最近、騎手の引退する年齢が早まっているのもうなづけます。

原因として考えられるのが、一つは地方所属騎手のJRA移籍、もう一つが外国人騎手のJRA移籍といった、昔でいえばまさに「黒船来航」の要因がかなりあるのではないかと思います。JRAの騎手免許があれば騎乗手当てや調教の手伝いなどでそれなりに生活はできる、という時代では確実になくなっています。

ただ最近注目すべきは、20代や30代での引退も多く出ていること。これは先ほどの福永騎手のエピソードで考えると「調教師、オーナーサイドが、以前ほど我慢して若手騎手を使ってくれない」ことが大きいでしょう。

騎手だけではなく調教師も確実に世代交代が進んでいます。北橋、瀬戸口元調教師のように所属騎手や主戦騎手をかばう風潮も最近では薄いのではないかと思います。

これがいいのか悪いのかは、馬券を買う外野ではなく、当事者のみぞ知るところですが、なんとなく寂しい感じがするのはわたしだけでしょうか。