競走馬で誰が強い、誰が弱いというのは甲乙つけがたいもの。どこのレースで勝った負けたなら明白な結果は出るが、もしも環境を変えたならどうなる?競馬にタラレバは禁止というのは知られた話。その他にも、オルフェーヴルとロードカナロアなど路線の違いにより対戦しなかった王者同士でも論争は巻き起こる。
英雄ディープインパクトなど3歳時にハーツクライに負けただけでその世代が弱かったと言われてしまう始末。そう、同世代ならまだ比較検証のしようもあるものの、人はディープインパクト対オルフェーヴルなども夢想してしまう。
誰が早いか、誰が強いかを決めるためのレースを、近代化が図られてからだけでも数世紀に渡りやってきた結晶が今に至るわけだから致し方ないのだろう。レースで決着が付かなかった部分はいくらこねくり回しても白黒など付かず灰色にしかならないが、それでも議論が止むことはないのは競馬にロマンを求める熱いファンがいるゆえと思いたい。
揺らぐ2016最強世代論
前置きが長くなったがここからが本題。今年の三歳馬世代は大豊作であると言われてきた。2歳時には天才ジョッキーの悲願を背負って朝日杯FSに挑んだエアスピネル。それを打ち砕いたリオンディーズ。
春を迎えてクラシックシーズンが本格化すればサトノダイヤモンド、マカヒキといったディープインパクト産駒達が台頭してくるなか、皐月賞を制したのは同じくディープインパクト産駒の伏兵馬ディーマジェスティ。
ダービーはまさしく最強世代に相応しい、皐月賞上位3頭、いわゆる3強による決着だった。この後に待ち受けるレースでは立ちはだかる古馬たちをなぎ倒す彼らの姿が容易に想像できた。
しかし、まず最強世代代表馬マカヒキは凱歌を上げるために渡仏したが、ジャパニーズホースマンの悲願、凱旋門賞制覇は高い壁に阻まれ惜敗には程遠い惨敗を喫した。
三強の一角皐月賞馬ディーマジェスティはジャパンカップで古馬勢と初の対戦を果たしたが、こちらも13着と惨敗。三歳馬勢ではレインボーラインが最高位の6着。
その他の重賞戦線においても、最強世代の主張は尽くはねのけられてきた。
大きく揺らぎ始めた最強世代論は三強のうち残された最後の1頭、最も強い馬が勝つ菊花賞の勲章を手にしたサトノダイヤモンドの肩に重くのしかかる形になった。
有馬記念へ出走する3歳馬はサトノダイヤモンドただ1頭。果たしてここで最強世代を再度証明することができるか?そもそも3歳馬がアブラの乗り切っている強豪古馬勢に立ち向かうだけでも分が悪い。かのディープインパクトですらハーツクライに苦渋を飲まされた。
これまでサトノダイヤモンドに土をつけたのはマカヒキ、ディーマジェスティの三強のみであり、間違いなく世代を代表するうちの1頭。しかし、秋以降古馬混合レースで成績を残せていない現段階で今世代を見るなら最強世代は幻想であると評価を改めざるを得ない。
更に覆してくれることにこそロマンもあるが、馬券は別。夢は持ちつつ、現実とはシビアに向き合わなければいけない。先立つものを失っては競馬を続けて行くことは出来ない。