昨年12月、英国競馬の障害騎手の一人であるアンドリュー・ソーントン騎手(44)が、英国内での障害レース通算1000勝の快挙を達成し、現地メディアもこれを称賛した。
日本の障害騎手のベテランである熊沢重文騎手(48)も昨年5月に通算1000勝を達成したが、JRAの「障害」の通算勝利数は208勝だ。障害レースに限ればソーントン騎手の方が大先輩となる。
「(1000勝までの)道のりを楽しんできただけ。浮き沈みがあり、山あり谷ありでしたが、障害レースとはそういうものです。」とソーントン騎手はコメントした。障害一筋で長年勝負してきたコメントにはやはり重みを感じる。
落馬した時、ジョッキーは何を思うのか?障害レースの大ベテランの答えは?!
競馬の障害レースは通常の騎乗にジャンプする動きが加わるため、普通の競走に比べて落馬事故が多いのが特徴としてあげられる。ベテランのソーントン騎手も落馬した経験は1度や2度じゃ済まない。つい昨年の10月5日も、英国のトウセスター競馬場で行われた障害レースで1000勝まで残すところあと4勝というところで落馬し、左鎖骨を骨折している。
英国のBBC公式ホームページで掲載された記事の1つに「騎手が落馬した時、家族よりも仕事のことが先に思い浮かぶのか?」という質問に、ソーントン騎手はトウセスター競馬場で落馬した時のことを振り返り、こう答えている。
「大変申し上げにくいことではありますが、一番はじめに思い浮かんだのは家族のことではありませんでした。まず一番はじめに思ったことは明日の騎乗機会は何だったっけ?ということです。痛みは酷かったですが、予定していた騎乗機会を逃す心配が一番はじめに思い浮かびました。」
競馬のジョッキーというのは落馬事故1つで命を落としかねない命がけの仕事である。その命を落としかねない落馬事故直後に騎手達は何を思うのか?という非常に興味深い問いを、障害の大ベテランであるソーントン騎手に投げかけた点は素晴らしく、改めて彼の持つプロ意識の高さを認識させられた。