屈腱炎とはその名の通り屈腱に炎症をきたす病気で、命にかかわるほどの病気ではないものの、治療に時間がかかり完治も難しいことから、調教も出来ないまま競走馬としてのピークを過ぎた数年後の完治を待つよりは引退を選ぶより他がない、というケースが多いようです。
もちろん、炎症の度合いが軽く十分に競走馬として復帰できる見込みがあれば引退する必要はありませんが、競走馬の飼育には莫大な費用がかかります。復帰して賞金により元を取れる可能性にかけるよりは、引退して第二の馬生を送らせてあげることができるならそのほうが幸せなこともあるでしょう。
キズナのような、種牡馬として期待される競走馬であれば何年もかけて治療するよりは引退して繁殖入りしてもらう決断は致し方ありません。
また、先月屈腱炎が発表され、続報の待たれるポルトドートウィユですが、全弟であり新馬戦での強さから注目を集めていたポルトフォイユも屈腱炎を発症したことが明らかとなりました。母ポルトフィーノも屈腱炎ではないものの、怪我に泣かされた競走馬生活でした。兄弟揃って同じ症状の発症ですので遺伝的な問題もあるのでしょうか。併せて今後の動向に注目が集まります。
今年は注目馬の怪我が目立ちます。皐月賞・ダービーと2冠をとったドゥラメンテ、凱旋門賞か三冠か、とメディアも論争を繰り広げるうちに両脚橈骨の骨折が判明し今年は休養へ。幸い引退に至るほどの怪我ではなく来春にも復帰の目処がたっているようです。ポルトドートウィユ、ドゥラメンテの出走したダービーからは他にもリアルスティール、ベルラップ、ミュゼスルタンが骨折、アダムスブリッジが屈腱炎となっています。
三歳馬以外でも、天皇賞(春)3連覇のかかっていたフェノーメノも右前足の炎症から回避、その後屈腱炎の発見によりそのまま引退。宝塚記念では人気投票2位であったエピファネイアも左前脚繋靭帯炎により宝塚記念を回避し、そのまま放牧中に復帰を断念し引退となりました。
競馬はブラッドスポーツ、競走馬を引退してからも競技に携わっているとはいうものの、健康を害した引退では素直に喜べません。ましてや、3歳馬の活躍前の引退では種牡馬となることはよほどのことがない限り難しいでしょう。
果たしてこれらの怪我は競走馬にとって切っても切れないものなのでしょうか。相次ぐ怪我の原因が俗に言う高速馬場にあるのではないにしても、もしもどこかに原因があるとするならばそれを究明し、無事に競走馬を走らせてあげられる環境を作る必要があるのではないでしょうか。