2015年10月4日、中山競馬場にて「第49回スプリンターズS」(G1)が開催される。音無厩舎所属のミッキーアイル(牡4)は前走の安田記念(G1、6/7)以来約4ヶ月ぶりのレースとなる。
前走の安田記念では15着と大敗を喫し、その負け方は着順以上に残念な内容であった。好スタートを切ったにもかかわらず抑えたせいか、道中では折り合いを欠き、直線に入っても途中で馬が走るのを辞めてしまっていた。おそらくは音無調教師による指示のもと鞍上の浜中騎手が控える競馬に徹したのだと思われるが、本来逃げ馬であるミッキーアイルを控えさせたのは脚質転換を図っていることが背景にある。
騎手は指示通りに乗らなければ降ろされる可能性もあるのでそれを懸念して控えるしかなかったのかもしれないが、レース後に「この馬なりに我慢してくれています。結果的に逃げた方が良かったのかもしれません」と浜中騎手がコメントしているように、本来のスタイルでは無い走りを要求されて馬が走る気をなくしてしまっては本末転倒ではないだろうか?
脚質は馬の「個性」
「逃げ」に限界を感じて「差し」に変える、ということは賭けである。脚質転換が成功しないまま引退してしまう馬もいる。本来の脚質のまま進めていれば伸びていく可能性だってあるのだ。馬の脚質というのは「馬の個性」でもあると筆者は考える。確かに控える競馬を覚えさせることで脚質の幅が広がって競馬がしやすくなるというメリットもある。しかし、その馬の個性である脚質では成績がのびないのでそれを制御して別のことをやらせることは、ある意味個性を否定することでもある。その馬の個性をもっと磨いて精度を高めていくという方法だってあるのだ。ミッキーアイルの場合は逃げ馬だが、逃げてペースをコントロールする調教をしたり、折り合いの精度を高めたりと、馬の良い部分を殺さずに伸ばすことだっていくらでも出来るはずである。
音無師が持つ"相馬眼"
そうしないで控える競馬を覚えさせているということは、ミッキーアイルの脚質に更なる可能性を感じているからだろうか。音無師は先週の神戸新聞杯(G2、9/27)で重賞初勝利をあげたリアファルを見事にダートから芝替わりに成功させた。馬の能力を見抜く優れた"相馬眼"を持つ調教師であることは確かである。G1の舞台で逃げきって勝てる逃げ足を持つミッキーアイルだが、無事に脚質転換を果たせたら一体どんな馬になるのだろうか?音無師が思い描くミッキーアイルの完成像は一体どんな馬なのだろうか?休み明けの一戦であるスプリンターズSでその答えが分かるかもしれない。