9月9日に開催となるアイリッシュチャンピオンステークスへの登録を今月末にもする意向をキタサンブラックの管理をする清水久詞調教師が明らかにした。大阪杯を優勝したことで優先出走権を得ているため登録さえすれば出走は叶うが、愛チャンピオンSの開催が9月9日で凱旋門賞が10月1日となり中2週で移動も2回することになる。あくまで大目標を凱旋門賞に定めるならばフランスで前哨戦を走るほうが無難だとは言えよう。エルコンドルパサーやオルフェーヴルの使った前哨戦として馴染み深いフォワ賞の開催日とも近い。ただし、どちらも実績があるとは言え本番では結果2着。験担ぎにしても前哨戦としてそこに拘る必要は特にない。
愛チャンピオンSも凱旋門賞同様に日本馬の優勝はないが、そもそも凱旋門賞との違いは日本馬による挑戦がないというのがある。優勝賞金は1億円未満、そして凱旋門賞に勝るとも劣らないヨーロッパのチャンピオンホースが揃い踏みする2000mのレースということで、日本にいる限りは秋の天皇賞を避けて出るメリットは薄い。実際に強豪が多数登録する影響か、フルゲートが埋まらない開催が続いている。また、ジャパンカップへの招待などと異なり、渡航・滞在費の補助が受けられるわけでもないため、大阪杯優勝による優先出走権というのも早速有名無実化してしまっている感は否めない。
とは言え、優勝賞金こそ低いものの歴代の優勝馬は錚々たる面子が並ぶ。今年のダービーに出走するマル外のベストアプローチの父ニューアプローチの名前も見受けられる。もしも勝利すれば種牡馬としての価値はうなぎ登り間違いなしだ。優先出走権こそ無意味なものだが、登録料は免除されるためギリギリまで回答を引き伸ばすことは可能だ。登録=出走ということでもないのは日本に来る予定だった数々の名馬たちに振られた経験もある。やり返すというわけではないが、これはオーナーサイドの持つ正式な権利なので咎めることではないのだろう。
多忙な武豊騎手、どの馬に乗ってどこへいく?
問題はキタサンブラック、オーナーサイドだけにとどまらない。鞍上が想定される武豊騎手が果たしてどこまでついてきてくれるかという点だ。昨年コリアカップで圧勝劇を演じたクリソライトだが、今年もコリアカップに出走することになれば日程は丸かぶりとなってしまい、どちらかにしか出走ができなくなる。両者からオファーがあった場合にどちらを選ぶだろうか?実際のところは、コリアカップ優勝時の鞍上は武豊騎手ではなくオーストラリアや南関で活躍する異色の日本人ジョッキー藤井勘一郎騎手だったうえ、キタサンブラックに乗ってくれと頼まれて断るジョッキーが果たしてどれだけいるだろうかを考えれば、杞憂にとどまるところだろう。昨年のラニの米三冠挑戦とエイシンヒカリの欧州遠征の同時進行で世界を股にかけたバイタリティあふれる活躍をしていた武豊騎手だが、まだまだ海外遠征ではお世話になる陣営も多そうだ。
さて、果たしてキタサンブラックが世界の強豪相手にどこまで活躍をしてくれるか、二兎を追う者は一兎をも得ずとも言うため、現実的には凱旋門賞へ専念すべきだろうが結局は陣営の判断次第。後は仕上げを御覧じろといったところ。何よりもまずは絵に描いた餅にならないためにも、宝塚記念での走りでぜひ世界を意識させる走りを見せてもらいたい。