6月に東京競馬場で開催された安田記念で5着に敗れたエアスピネル(牡4、笹田和秀厩舎)が、C.ルメール騎手と新たにコンビを組んで札幌記念(G2、8月20日、札幌)に向かうことが、同馬を管理する笹田調教師から19日に発表がありました。
現在エアスピネルはすでに函館競馬場へ入厩しており、札幌記念後は天皇賞秋を目標にすることを明かしております。本番の天皇賞秋での鞍上はまだ未定となっておりますが、デビュー戦から前走の安田記念まで手綱を握っていた主戦騎手の乗り替わりに驚きを隠せないファンも多いことでしょう。
最近は悪いニュース続きの武豊騎手。6月の宝塚記念では圧倒的な支持を集めていたキタサンブラックに騎乗して9着に敗れ、悲願であった凱旋門賞への道もオーナーの意向により閉ざされてしまいました。年始のJRA賞授賞式では「シャンティイの芝適性はあると思います」と乗り気でないオーナーの背中を押すようなコメントを残していることからも、キタサンブラックでの凱旋門賞挑戦はかなり期待していたことが窺えます。
宝塚記念での一件が相当堪えたのか、レース後には自身のオフィシャルサイトの日記で「うれしいことがあり、そうでもないこともあった、先週の競馬。今週末は、中京でたくさんのいいことに出会えるように頑張ります。」と、たった2行の文章で想いを綴っております。
公式サイトの日記を定期的に購読しているファンの方ならすぐにこの異変に気付いたかと思いますが、普段は数行にわたり、時折ユーモアを交えた内容の日記を書くことが多い武豊騎手が、この日の日記だけはトーンが低く、明らかに口数が少なかったのです。精神的なダメージは大きかったに違いありません。
キタサンブラックで宝塚記念敗戦、凱旋門賞白紙、エアスピネル乗り替わり…向かい風が吹き続ける武豊を心配する声も
そこへきてエアスピネルの乗り替わりです。この日記が書かれた時点でエアスピネルの乗り替わりについて武豊騎手が知らされていたかどうかは不明ですが、母のエアメサイアの主戦騎手でもあり、思い入れも相当あったであろう馬から結果的に降ろされたような形となってしまったのは、いくらレジェンドと言われる武豊騎手でもさすがに堪えたのではないでしょうか。
インターネットの某掲示板では「引退考え始めてもおかしくない状況だ」「疲れてますね」「頑張れ武豊さん」「勝たないから悪い」「結果を出せてないんだから降ろされて当然」などなど、今回の乗り替わりについて同情や賛否両論が騒がれております。
エアスピネルを管理する笹田調教師は「オーナーと相談して札幌記念出す事を決めた」としかコメントしておりませんが、札幌記念で順調に賞金を加算して天皇賞秋へと進めたとしても、武豊騎手はキタサンブラックに乗るのでどちみち乗ることはできませんので、新味が出るかを試すという意味でもちょうど空いていたルメール騎手を起用したのは妥当と言えば妥当でしょう。
ただ、ルメール騎手には天皇賞秋を目標に掲げたソウルスターリングもおりますし、札幌記念で順調に賞金を加算して天皇賞秋へと進めたとしても、本番でエアスピネルに乗る可能性は低いです。そう考えるとルメール騎手の起用は完全に札幌記念限定のもので、先の天皇賞秋よりも、まずは目先の札幌記念で何としても賞金を加算しておきたいという姿勢の現れともとることができるのではないでしょうか。札幌記念はエアスピネルにとって試金石の一戦となりそうですね。
いずれにせよ、今回のルメール騎手への乗り替わり然り、キタサンブラックでの敗戦然り、凱旋門賞白紙然り、ここまで不振な武豊騎手を見るのは近年では珍しいことです。2010年の大きな落馬負傷や、社台系の騎乗数激減など、様々な苦難を乗り越えてきたベテラン騎手ですからここで腐るような騎手ではないと思いますが、武豊騎手にとってもこの下半期の競馬は当面の試金石となりそうです。