今年のスプリンターズステークスは非常に予想が難しいと言わざるを得ない。絶対王者ロードカナロアが引退して以降、群雄割拠の様相を呈してきた短距離界だが、その集大成とも言えるレースになっている。ロードカナロア引退後に日本のスプリントG1を制覇したチャンピオンホースのうち現役の馬4頭が一堂に会することになった。そして、輪をかけるように予想を困難にさせるのが、4頭ともにここへ至る過程が思うように行っていない点である。
最古参であるスノードラゴンは9歳という馬齢に比すればよく頑張っているほうかもしれないが、最後の勝利がちょうど3年前のスプリンターズステークスでこの時点で6歳。そこからは3着がやっとというところで、前走セントウルSでも8着という結果に甘んじた。スノードラゴンは結果こそついてきていないが、無事是名馬とも言うようにいわゆる短距離路線を無事に走破してきている点が素晴らしい。他の3頭に関してはローテーションもセオリー通りには行っていない。
今年の高松宮記念勝ち馬であるセイウンコウセイは函館スプリントステークスで4着と、直近のチャンピオンとしては少々物足りない成績のまま休養明けから直接ここへ、比較的安定しているレッドファルクスも、前走距離延長で挑戦した安田記念での3着とまずまずの結果を手にしたが、それでもやはり前哨戦は使わずこの馬も本番へ直行する運びとなった。
もっとも難しいのがビッグアーサーの取捨選択だ。昨年の高松宮記念で念願の重賞初制覇にしてG1ウィナーの称号を手にし、続く秋の始動戦セントウルSでも見事に優勝したまではよかったが、スプリンターズSと香港スプリントと続けて二桁着順の大惨敗を喫した。そのまま高松宮記念も左前脚の筋挫傷で、セントウルSもまた左前脚の蹄球部の痛みで出走を見送り、今回が今年の初出走になる。やはり気になるのは左前脚の具合だが、普通に考えればここは買いの材料とはならない。しかし、入念に治療した成果が見られるようならば、デビュー戦以外すべて1番人気で出走してきたビッグアーサーにかかる期待は今回も大きい。
チャンピオンたちに一癖ある以上、抑えておきたいのがその他の出走馬達。キーンランドカップを勝利して優先出走の権利を得たエポワスは残念ながら回避し12月の阪神カップへ向かったが、セントウルS勝ち馬ファインニードルや、北九州記念でファインニードルを下している上がり馬ダイアナヘイローもいる。また、生粋のスプリンターではないが、忘れてはいけないG1馬がレッツゴードンキだ。
G1の開幕戦に相応しい、短距離路線のオールスターと言ってもよいだろう強豪が揃った。果たして新旧スプリントチャンピオンのいずれかが二冠目を頂くのか、下克上をおこし更に短距離界に混沌を巻き起こすか、見ごたえのあるスプリンターズステークスとなりそうだ。