「競馬の外れ馬券は経費ではない」として追徴課税した税務当局に対し、これを違法だとして北海道の男性は国に1億9000万円の課税取消を求めていた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は判決期日を12月15日に指定しました。結論を変更するのに必要な弁論を開かないため、外れ馬券は経費であると認め、約1億9000万円の追徴課税処分を取り消した2審・東京高裁判決(2016年4月)が確定する見通しとなりました。
個人的には「当然のことが当然の結果となった」という印象ですが、2015年にも行われた外れ馬券を巡る大阪の男性の刑事裁判同様、今回も条件が限定的で、このケースに応じた判決が下されたかたちとなっている以上根本的な解決になったとは言い難いでしょう。
今回、1,2審判決によると、原告の北海道の男性はインターネットで計約72億7千万円分の馬券を購入し、計約5億7千万円の利益を得ていたといいます。払戻金は「雑所得」にあたるとして、この男性は外れ馬券分を経費にして算入して申告をしておりました。しかし、札幌国税局は払戻金を「一時所得」と認定し、外れ馬券分を経費と認めなかったため、男性は課税処分の取り消しを求めておりました。真面目に申告したつもりが逆にこのような処分が課されるとは世も末。裁判の費用と労力を考えると気の毒に思えてきます。
どこまでが「一時所得」で、どこまでが「雑所得」なのか?
平成27年5月に国税庁が発表した「競馬の馬券の払戻金に係る課税の取扱い等について」では、「所得税法上、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。」と記されており、雑所得と一時所得の明確な線引きはされていないものの、営利を目的とする継続的な行為であるということが認められれば雑所得として区分されるというようなニュアンスです。
北海道の男性の場合は、コンピューターソフトなどを使わずにレースごとに自身で予想してネットで購入をしており、1審東京地裁は「経済的活動の実態があるとはいえない」として課税処分は適法としておりました。しかし、2審は「男性は多額の利益を恒常的に上げていた」と判断し、2015年に自動購入ソフトを使用してネットで馬券を購入していた大阪の男性の最高裁のケースと「購入方法に本質的な違いはない」とし、外れ馬券分を経費と認めて課税処分を取り消したのでした。
自動購入ソフトは使わずとも継続的に購入して利益を上げ続けていたということが認められ、外れ馬券が雑所得として認められたかたちになりましたが、結局、上記でも記しましたが、どこまでが一時所得でどこまでが雑所得かという部分が明確に示されない限り、そして税務当局の取れるところは取るという姿勢が変わらない限りは、今後も同じような裁判が続くでしょう。
趣味の範囲内で競馬を楽しんでいる一般的な競馬ファンからすればそこまで気にするような話ではないとは思いますが、WIN5のような大きな配当を手にした場合は税金はどうなるのか?たまたま連続で高額配当を的中させた場合はどうなるのか?など、払戻金の税金について悩むことになる可能性は全く無いとは限りません。現在はカジノ解禁へ向けたカジノ法案も進められておりますし、公営ギャンブルで得たお金の税金についてはどうなるのか、また、それが競馬の払戻金の税金とどう関係してくるのかなど、ギャンブルの税金については今後も注目していく必要がありそうです。