昨年2017年の凱旋門賞は、日本からはサトノダイヤモンド(牡4、池江泰寿厩舎)と、サトノノブレス(牡7、池江泰寿厩舎)が挑戦した。しかし、結果はサトノダイヤモンド15着、サトノノブレス16着と惨敗。とくにサトノダイヤモンドはその戦歴からも大きな期待が寄せられていただけに、予想以上の惨敗は非常に残念だった。これまで20回以上も凱旋門賞に挑んできた日本勢だが、一度も勝てていないのが現状である。
「今年こそは」と毎年挑戦する馬の発表を楽しみにしているが、先日16日、2018年の凱旋門賞への挑戦を検討している馬が(株)ノースヒルズの代表である前田幸治氏により発表された。クリンチャー(牡4、宮本博厩舎)とジャンダルム(牡3、池江泰寿厩舎)である。
この意外な2頭の発表に驚くと同時に、例年以上に期待感を抱いた。これまで日本の競馬を代表するような数々のG1馬が凱旋門賞へ挑戦してきたことを考えると、重賞勝ち鞍がG2であるこの2頭のキャリアは心もとないと感じるだろう。意外と記したのはもちろんそのキャリアが理由だが、過去に挑戦してきたキャリア豊富な名馬たちですら勝つことができていないのも事実である。
勝てない理由として業界で度々あげられているのが、競走馬における日本と欧州が求める強さの違いだ。凱旋門賞が行われるフランスの芝は自然に近い状態でパワーが必要な芝だが、日本の芝は綺麗に整備されておりスピードが出やすい芝となっている。自然のままのタフな馬場で精神とスタミナの限界に挑み勝利することが強さである欧州に対し、日本の競馬はスピードが出やすいように整備された馬場で速い上がりを出して驀進する馬を強いとする風潮がある。
欧州の馬場に苦しんで苦杯をなめてきた日本馬は多くいるが、逆もまた然りで、凱旋門賞馬が日本のジャパンカップに挑戦する機会が過去に幾度かあったが、速い流れや高速馬場に対応できずに惨敗するケースがほとんどである。
要するに、日本で強いと言われる馬は必ずしも欧州でも強いとは限らないし、逆もまた同様なのである。今回発表されたクリンチャーとジャンダルムは、これまで挑戦してきた日本馬たちと比較すると戦績こそ劣るが、海外のレース花開く可能性は十分にある。
とくに注目しているのはクリンチャーだ。昨年は極悪不良馬場となった菊花賞で3着に入着し、その後は重馬場の京都記念でアルアインを破って優勝した。ダートで好走馬を多く輩出しているディープスカイ産駒というだけあり、まさに重い馬場でこそ力を発揮するパワータイプという感じである。欧州の馬場適性は高そうだ。
とは言え、馬場適性だけで勝てるほど凱旋門賞は甘くはない。20頭という多頭数で行われることもある凱旋門賞はスローペースになることも多く、馬群で我慢できる「精神力」や、馬群を割れる「器用さ」、抜け出せる「瞬発力」も求められる。瞬発力に欠けるクリンチャーにとっては厳しいかもしれないが、瞬発力自慢の馬たちがあっさり負けるシーンもこれまで何度も見てきた。例年の切れ味タイプとは違い、馬場適性が高そうなパワータイプが出走するというだけでも見所はありそうだ。
クリンチャーの次走は天皇賞春の予定で、凱旋門賞はその後になる。現在は一次登録を申請中。日本人初の凱旋門賞制覇を夢見る一競馬ファンとして、同馬の活躍に大いに期待したい。