武豊騎手のまさかの騎乗停止によりクリンチャーに乗ることになった三浦皇成騎手。G1初勝利を果たす、願ってもないチャンスが巡ってきた。
クリンチャーは皐月賞4着、ダービー13着と春のクラシックこそ結果を残せなかったが、菊花賞では10番人気と低評価ながら2着に健闘。今年に入ると初戦の京都記念を制して重賞初制覇を達成し、続く阪神大賞典でも3着に入着し、本格化の気配を漂わせた。長距離適性の高さや近走の好走ぶりからも、上位人気の一角に推される一頭だ。
「長距離は騎手で買え」という競馬の格言があるが、展開が重視される長距離ではペースを読める一流ジョッキーの存在が大きな鍵を握るため、騎手の腕が問われやすいという特徴がある。昨年の天皇賞春をキタサンブラックで優勝し、連覇を果たした名手・武豊は過去に天皇賞春を6勝(6−5−4−6)もしており、申し分ない騎手と言っていい。彼が手綱を握るということでクリンチャーを有力視していたファンも少なくないはずだ。
そんな信頼度の高い騎手から乗り代わるのだから、代役の騎手には荷が重いと見られるのは致し方ない。三浦騎手にとってはプレッシャーのかかる一戦となりそうだが、果たして大役を果たすことはできるだろうか?以下に、三浦騎手の過去10年間のレースの距離別成績をまとめてみたので考察してみたいと思う。
三浦騎手の長距離適性は?
距離 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1200m | 117-127-112-926 | 9.1% | 19.0% | 27.8% |
1400m | 56-80-74-633 | 6.6% | 16.1% | 24.9% |
1600m | 98-103-86-959 | 7.9% | 16.1% | 23.0% |
1800m | 121-118-141-1115 | 8.1% | 16.0% | 25.4% |
2000m | 48-54-48-526 | 7.1% | 15.1% | 22.2% |
2400m | 17-13-20-147 | 8.6% | 15.2% | 25.4% |
3000m~ | 1-1-1-13 | 6.3% | 12.5% | 18.8% |
※集計期間:2008/4/26~2018/4/8
3000m以上のレース成績は「1-1-1-13」となっており、他の距離の成績と比べると一番好走率が低くなっているのが分かる。天皇賞春は京都競馬場の芝3200mを使用。三浦騎手は天皇賞春は2016年にファントムライトで挑んでおり、14着に敗れている。京都の芝3200mを経験したのはこの一戦のみとなっている。
過去の成績やデータからも、長距離巧者とは言い難く、長距離レースではアテにしづらいというのが正直なところだ。今年はフェブラリーS・3着、高松宮記念・3着とG1の成績が良い三浦騎手だが、果たして天皇賞春でも活躍することはできるだろうか?己の真価が問われる一戦となりそうだ。
長距離レースを得意とする騎手は?
「長距離戦は騎手で買え」という格言通りに、騎手で買うなら一体誰から買うのが良いのだろうか?以下に2500m以上のレースの騎手別成績をまとめてみた。
騎手 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
内田博幸 | 19-11-11-81 | 15.6% | 24.6% | 33.6% |
岩田康誠 | 17-18-18-74 | 13.4% | 27.6% | 41.7% |
蛯名正義 | 17-22-14-98 | 11.3% | 25.8% | 35.1% |
戸崎圭太 | 16-18-5-57 | 16.7% | 35.4% | 40.6% |
横山典弘 | 15-6-16-96 | 11.3% | 15.8% | 27.8% |
福永祐一 | 13-11-10-61 | 13.7% | 25.3% | 35.8% |
池添謙一 | 13-7-7-70 | 13.4% | 20.6% | 27.8% |
C.ルメール | 12-9-8-28 | 21.1% | 36.8% | 50.9% |
武豊 | 11-9-7-54 | 13.6% | 24.7% | 33.3% |
川田将雅 | 10-6-8-55 | 12.7% | 20.3% | 30.4% |
藤岡佑介 | 10-15-5-62 | 10.9% | 27.2% | 32.6% |
M.デムーロ | 5-4-4-31 | 11.4% | 20.5% | 29.5% |
三浦皇成 | 12-12-13-124 | 7.5% | 14.9% | 23.0% |
※集計期間:2008/4/26~2018/4/8
長距離になるほどペース配分や駆け引きが重要になると言うが、それを裏付けるように上位にはベテラン勢が顔を揃えた。最多勝利数の19勝を挙げている内田騎手はもちろん、岩田騎手や蛯名騎手もやはり好走率が高い。
中でも好走率ベースで見た時に目を見張るのはC.ルメール騎手の成績だ。12勝を挙げ、勝率・連対率・複勝率と何れもトップ。2015年にJRAの通年免許を取得するまでは短期で来日していたことを考えると、レース数が少ない中でこの好成績は驚異的と言っていいだろう。
ルメール騎手は昨年の天皇賞春はサトノダイヤモンドで挑んで3着。今年はステイヤーズS・3連覇を果たした長距離巧者のアルバートで臨む予定となっているが、人馬ともに長距離巧者となれば心強い。アルバートに騎乗するのは2016年の天皇賞春以来となるが、この時は6着に敗れている。昨年の天皇賞春はアルバートは川田騎手とのコンビで参戦し5着に入着。今年はルメール騎手とコンビを復活させ、三度目の正直で初タイトル獲得を目指す。それぞれ大一番に向けて、さまざまな思惑が絡み合うスリリングな一戦となりそうだ。