以前の記事で日本での通年免許獲得を目指す3人目の刺客として、J.モレイラ騎手を紹介させていただきましたが、そのモレイラ騎手が今年もJRAの短期免許を獲得し、札幌競馬開幕週(7月28、29日)から騎乗する方向で調整が進められていることが明らかになりました。2日、デイリースポーツが報じました。
今秋に行われるJRAの騎手免許試験に向けて本人は日本語の勉強に精を出しているようですが、今回はレースの方でも成績を残して日本のファンや関係者へ向けてアピールしたいところでしょう。
札幌は昨年来日した際も乗っており、12勝を挙げるなど好成績です。15年にはワールドオールスタージョッキーズで優勝し、16年に札幌に短期免許で来日した際はJRA最多タイ記録となる騎乗機会7連勝を達成するなど、今や日本の夏競馬を盛り上げてくれる重要な存在となったモレイラ騎手。香港のNo.1ジョッキーというブランドも大きな魅力ですし、関係者やファン一同含めて全体的にモレイラ騎手の通年騎乗は“ウェルカム”な態勢と個人的には思っているのですが、過去の前例を見るとそう簡単にはいかない模様です。
今でこそリーディングトップの常連となったデムーロ騎手や、“アンカツ”の愛称で親しまれる安藤勝己騎手といった名手も過去に中央の騎手試験を受けておりますが、いずれも一度は不合格になっております。2015年には通年免許を目指す3人目の外国人騎手としてイタリアからD.バルジュー騎手が来日して1次試験を受けておりますが、不合格となっております。一発合格はそうそう無いだけに、今回もスンナリ合格とはいかない可能性は十分あります。
京都に「一見さんお断り」という商い上の習慣があるように、今でも花街の敷居は高く、根強い文化として日本に残っております。賛否両論あるとは思いますが、顧客満足につながる文化として一部大企業でも採用されるようなシステムであり、こういった習慣が競馬業界で見られてもおかしくないかもしれませんね。
とは言え、JRAも有望な騎手の採用に向けては色々と試行錯誤してきているという印象はあります。現に1次試験を英語でも受験可能にしたおかげで、デムーロ騎手やルメール騎手といった名騎手を誕生させることに成功しましたし、アンカツについても、1次試験に不合格となった際にはJRAに関係者やファンから多くの抗議が殺到し、その結果として「直近5年以内にJRAで年間20勝を2回マークすれば1次試験を免除される」といういわゆる「アンカツルール」が翌年に採用されることになり、今JRA騎手として活躍する岩田康誠騎手や内田博幸騎手も、この制度を利用したおかげで中央へ移籍することが出来ました。
有望な騎手の採用とあれば、たった一人の採用でも試験制度は変わりますし、モレイラ騎手ほどの実績を持ってすれば「一見さんお断り」の組織風土すら変わる可能性だってあるでしょう。今年6月に香港の英字新聞のサウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に対して「もし試験に合格できなくても、また来年挑戦すれば良い。そしたら2019年はブラジルに戻って乗るか休むかするよ。」とも語っており、仮に落ちても再チャレンジの意欲は満々。これまで国内では夏限定の印象が強いモレイラ騎手でしたが、“JRA騎手・J.モレイラ”の誕生もそう遠くない未来かもしれませんね。