短期免許で来日しているカナダのルイス・コントレラス騎手が薬物検出により騎乗停止となった。JRAは2月6日に行われた騎手の薬物使用に関する検査において、コントレラス騎手から採取された検体が麻薬指定されている「オキシコドン」であると発表した。
麻薬の一種「オキシコドン」ってどんな薬?
さて、このオキシコドンという薬物。日本ではなかなか耳にすることのない名前だが、どこかで聞き覚えがあるという方もいるのでは?というのも、昨年トヨタ自動車の女性常務役員のジュリー・ハンプ容疑者もこのオキシコドンを服用し、麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたばかりである。結果は不起訴となったがテレビのニュースでも度々取り上げられていたので今回の件で思い出した人も少なくないのでは?
このオキシコドンという薬は日本では麻薬及び向精神薬取締法における「麻薬」であり、がん疼痛治療法においてのみ保険が適用される劇薬である。アメリカでは医師の処方箋があれば処方されるが、オピオイド療法(モルヒネに並ぶ鎮痛剤のひとつ)が必要となるくらいに深刻な痛みが伴う場合に処方される薬で、そう簡単に手に入るものではない。中毒性を持つ処方薬としても有名で、 数種類の薬を複合したことによって中毒死したマイケル・ジャクソン氏もこのオキシコドンを服用していたという。オキシコドン中毒者は有名人などの海外セレブにも多く、オーバードーズ(過量服薬)により死亡するケースも少なくない。このように、海外では本来の使用目的とは別の使い方をしているケースが目立つ。ハンプ氏やコントレラス氏がこの薬を処方しないと持たないほどの状態であったかどうかは不明だが、難病を抱えたり大きな怪我をしていたわけでも無い様子から、正しく使用していたかどうかについてを疑われても仕方ない。いずれにせよ違法な麻薬なことは間違いないので今後JRAや警察がどう対応するのかを待ちたい。
「公正」を謳うならキチンとしたシステムを
この薬物検出による問題はコントレラス騎手自身の問題だけでなく、多くの問題を浮き彫りにした。海外から持ち込んだとしたのなら、麻薬として取り締まっている薬物を簡単に国内に持ち込めるということ自体がセキュリティ上の欠陥であるし、本人が麻薬指定されていると知らなかったとしても、短期免許付与の際の審査が緩かった、JRAのリスク管理が相当に甘かったのだと言わざるをえない。
かつて日本が誇る名馬・ディープインパクトが凱旋門賞で禁止薬物が検出され失格となった事件があった。これは日本国内では禁止薬物とされていなかったものが海外では禁止とされており結果失格となってしまったわけだが、当時絶大な人気と期待がかかっていた馬なだけに陣営の認識の甘さが問題点として挙げられた。「競馬」というジャンルに関わらず、薬物については国が違ってくると難しい問題であるので、「公正」なスポーツを謳うなら来る2020年の東京オリンピックなどに向けてもキチンとした薬物検査のシステムを確率していただきたい。