【弥生賞2016回顧】3強による決着は無難ながらもこれからのバランスを変えた

日曜の中山メインは皐月賞トライアルの弥生賞(G2)が開催された。戦前に注目を集めていた3頭で順当に決まったレースだった。

前半800メートル・46.5、1000メートル・59.5。実は、この800メートルの通過タイムは前日の土曜日に行われたマイルの桜花賞トライアル・チューリップ賞(G3)より速く、総合能力がフルに試される競馬になった。

勝ったマカヒキはこれで3戦3勝。過去2戦のようなスローから一転しての厳しい競馬となったが完璧。ペースが流れたとはいえ、折り合いが全く心配ないタイプだからこの日も安心して見ていられた。道中、力みもなくリラックスして走れれば、これぐらいの脚は使えるんだよという良い見本のような馬である。

おそらくペットとして飼うことができても手はかからないタイプだ。それぐらい競馬での気性が素直。

しかし、今年のルメール騎手。お手馬にサトノダイヤモンドがおり体が2つ欲しいと切に感じているだろう。トップジョッキーならではの贅沢な悩みでもある。サトノダイヤモンドとマカヒキの無敗馬対決に心躍らせる春がもうすぐやってくる。それまで、色々な妄想を楽しみたいと感じている。

2着・リオンディーズは、前走・朝日杯FS(G1)とはポジションが変わっていた。変わったというよりも、この日は懸念していた折り合い面で少し苦労した。ガツンとまではいかないが、常に道中、力んでいた印象。

スタート直後はエアスピネルより後ろにいたが、結局、向正面に入る頃には、エアスピネル、マカヒキより前の4番手の位置に落ち着いた。直線は坂を上がってからも最後まで脚色は衰えなかったが、この日はスムーズに競馬をしたマカヒキの末脚の前に屈した。休み明けを叩いて本番に期待。

3着・エアスピネルもこの日は珍しくスタート直後の折り合い面で口を割るところがあるなど、少し苦労した。エアスピネルの競馬においての器用さから、中山2000メートルは向いているようにも見えたが結果は3強の中では最も下の着順に終わった。

しかしながら4着以下には5馬身の差を付けている。馬が弱いのではない。相手が強すぎなだけである。

3/4馬身だった朝日杯時のリオンディーズとの着差は2馬身になった。皐月賞(G1)は、この日の結果でまた道中のポジションが変わる可能性も出てきた。総合能力ではこの日の2強には劣るかもしれないが、スピード能力だったら世代屈指の馬でもある。

相手に合わす競馬をするのではなく、自分から動いていって奇襲を仕掛ける作戦も面白いような気もする。有力馬同士が後ろで牽制している流れになれば、自然とエアスピネルの注意は薄くなる。そのような展開になった時が最大のチャンスかもしれない。

02年ノーリーズン、04年ダイワメジャー、07年ヴィクトリー、08年キャプテントゥーレは能力は高かったが皐月賞の時点では注目度も低く人気薄であった。有力馬同士が牽制している間に、この4頭はマークされることもなく逃げ切り、先行抜け出しを決めた良いお手本である。天才ジョッキーのクラシック本番での作戦に注目してみたい。

4着・タイセイサミットも最高の競馬。折り合い面に関しては、エアスピネルとリオンディーズよりスムーズだった。中山2000はやっぱり走る。自分の力はしっかりとコンスタントに発揮するタイプだから、この先も期待。

11着・ケンホファヴァルトの小崎騎手には個人的に拍手を送りたい気分である。例年スローになりがちなトライアルのレースを本番のような厳しい流れにして各馬の底力がフルに発揮されやすいような競馬を演出してくれた。これだけのペースで流れたから、本当の実力を見ることができたし、リオンとエアの着差は2馬身、エアとタイセイの着差は5馬身もついた。

おそらく、これがスローであれば、余力を残して直線に入るため、ここまで着差はつかなかっただろう。今年3年目の若さの力というものを見たような気がする。小崎騎手の今後にも期待してみたい。

今年の弥生賞は前評判通りの強い馬が強い競馬をするという満足度の高いレースとなったような気がする。