昨年春、イギリスで「チャンピオンシップ・ホースレーシング(Championship Horse Racing:CHR)」という団体が、F1と同じようなポイント制を用いた競馬のチーム対抗戦「ザ・シリーズ(The Series)」を企画しました。同シリーズは世界のブランドや企業がチームとして馬、騎手、調教師らを管理してレースに参加し、ポイントを競い合って行われるというシリーズで、昨年12月には2019年夏にイギリスで開催される見通しであることを発表しており、個人的にも非常に注目していた企画でした。
しかしCHRの広報担当者は先月末、イギリスのBBCスポーツに対し「現在我々は2020年の開催へ向けてチームを準備中です。今年の夏中には詳しい見通しなどを発表する予定です。」と発表し、今夏の開催を見送り、来年の2020年に開催を延期することを正式に発表しました。
延期となった理由としては、チームの準備が難航していることの他に、イギリスの競馬統括機関として知られる英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)の承認が必要となることなどがあがっております。
ただ、英国ジョッキークラブと競馬場メディアグループ(Racecourse Media Group)は、このシリーズにおける馬主制度やパートナーシップ契約に原則的に合意しており、イギリスの最大かつ最古の民間放送局であるITVもシリーズ全体の放映に合意するなど、企画の実現へ向けて多くの機関が支持をしており、世界の競馬業界の新たな試みとして多くの競馬関係者が注目をしております。
中東カタールの馬主組織として有名な「カタールレーシング」のオーナーでもあり、中東の競馬を発展させたカタールの有力な一族として知られるシェイク・ファハド(Sheikh Fahad)殿下は、自身のツイッターアカウントで同シリーズについて「馬鹿げた考え」と批判するなど、世界の競馬関係者の中でもすでに賛否両論さまざまな議論が巻き起こっております。
企業名義で馬主になるとそれだけでその企業の事業の宣伝になるとよく言いますが、この「ザ・シリーズ」のようにブランドや企業がF1のようにチームとして参加するシリーズが開催されれば、その宣伝効果も大きなものになる可能性が高く、ブランドや企業にとっても有益な企画となる可能性があります。
現在日本のブランドがチームとして参加する話はありませんし、JRAが関与するかどうかの問題もありますが、競馬ファンの多さやレースの売上の多さから、世界一の馬券大国としても知られる日本にとっても大変興味深い企画と言って良いのではないでしょうか。今後の動向に注目したいと思います。
「ザ・シリーズ」の形式
- ブランドを掲げた12チームが競い合う。
- 各チームは馬30頭、調教師1人、騎手4名で構成。
- 各チームは7月~9月の全8開催日(毎週木曜夕方に施行)で競い合う。
- 1開催日は6レースで構成され、各チームはそれぞれ48レースに1頭ずつ出走させる。
- F1と同じような方式で、10着までにポイントを付与。(例:優勝馬は25ポイント、10着馬は1ポイント)
- 英国競馬界への投資は1,000万ポンド(約15億円)以上。