なかなか意外で面白いメンバーが揃った今年のエルムS。中でもとくに驚いたのが「マルターズアポジー」と「タイムフライヤー」の2頭だ。いずれも芝レースを主戦場としている馬で、ダートは今回が初出走となる。
マルターズアポジーは、どんなレースでも積極的にハナを切って逃げる生粋の逃げ馬だ。毎年夏競馬は欠かさず参戦しているが、ここへ来てダートレースに登録してきたのは意外であった。とは言え、1年以上馬券に絡んでいない現状を考えるとダートへ転身して心機一転再びの躍進に期待するのも頷ける。
ダートでも芝と同じ逃げ脚を使えるなら面白い存在となるが、砂でもダッシュがつくのかどうかがポイントとなるだろう。今年はリアンヴェリテ、ドリームキラリ、スーパーステションといった同型が多数出走予定となっているので、スタートが上手く決まったとしても激流になる可能性が高い。ただ、やはりスピード能力は高いので、ハナをきれればそのまま行ききるということも十分あり得る。
こればかりは走らせてみないと分からないが、父も母父もバリバリの米国血統で血統的には十分こなせそうな気配がある。凡走続き近走に加えて初ダート挑戦なら馬券的な妙味もたっぷり。単複あたりで狙いたくなる1頭だ。
一方、タイムフライヤーは4月にはダートG3の平安Sへの参戦を発表していたので(脚元不安で見送り)今回のエルムS出走はさほど驚くようなことではないが、ホープフルS優勝以来目立った活躍はしておらず、近況を知らなかったファンも少なくないだろう。
血統は伯父にタイムパラドックス、母のいとこには重馬場巧者のサクラローレルがおり、ダートの適性は見込める血統である。年齢も4歳と若く、まだ色々と試せる年齢だ。ダート初挑戦とは言え、ある程度の人気は集めることになりそうだ。
ただ、今回はいきなり重賞なのである程度強いメンバーが揃っている点、そして春に球節の腫れと熱感で平安Sを回避している点など、ダート適性意外にも乗り越えなくてはならない壁が多数あり、プラス要素もそこまで多くない。必ずしも順調とは言い難い側面がある以上、強くは狙い難い1頭だ。
後方からの競馬が主流だったタイムフライヤーだったが、前走の京都記念では初めて逃げて8着に敗れている。逃げで変わり身を試みた後はダート変わりで一変に期待と、陣営も試行錯誤しているのが伺える。かねてからダートに適性があると言われていた馬だが、吉と出るか凶と出るかに注目だ。
エルムSは8月11日(日)に、札幌競馬場の第11Rで実施。発走時間は15時25分の予定。