先週の新潟記念で15番人気のゴールドサーベラスに騎乗し、9着に敗れた藤田菜七子騎手。JRA8週連続Vとはならなかったが、7週連続勝利を挙げ、6月はスウェーデンのブローパーク競馬場で行なわれたウィメンジョッキーズワールドカップで総合優勝を果たすなど、今夏は国内外で活躍を見せている。
競馬界では珍しい女性騎手ということで存在自体が注目されがちな藤田騎手。実績面では、過去にJRAの女性騎手として活躍した増沢(旧姓・牧原)由貴子元騎手や、現在競馬評論家として活動中の元騎手・細江純子さんの実績と比較されることが多かったが、すでに女性騎手として様々な記録を更新し終え、ようやく一騎手として見られはじめてきた印象がある。
デビュー4年目を迎えた藤田騎手だが、他の32期生との比較ではどうだろうか。各騎手の現在の勝利数をまとめてみた。(9/3時点)
- 荻野極(栗東・清水久) 112勝
- 木幡巧也(美浦・牧) 103勝(うち重賞1勝)
- 坂井瑠星(栗東・矢作) 88勝(うち重賞1勝)
- 藤田菜七子(美浦・根本) 74勝
- 森裕太朗(栗東・鈴木孝) 56勝
- 菊沢一樹(美浦・菊沢) 55勝(うち重賞1勝)
6名の同期の中では勝利数は4番目となっており、重賞勝利もなく、正直目立った実績では無い。ただ、海外での勝利実績や、G1での人気馬騎乗経験など、他の同期メンバーが経験できていないことを多く経験している。恵まれた、恵まれていないという点を指摘したいのではなく、こうした実績だけでは見えない経験の部分が今後騎手の成長に大きく関わってくる可能性は高く、単純に将来を期待するという意味で注目に値する騎手であることは事実であると感じる。
今年から、女性騎手には恒常的に2kgの斤量のアドバンテージ(特別、重賞競走を除く)が与えられることになり、藤田騎手は永久的にその恩恵を受け続ける事が出来るようになった。フランスでは女性騎手の斤量2kg減は既に実施されておりそれに則った形ともいえ、またこれからの女性騎手の誕生を促す意味も当然あるだろう。女性ジョッキーの参戦が増えれば競馬場のムードも華やかになり、来場する若いファンも増えそうなので、個人的には大賛成である。
牡馬と牝馬で斤量の違いがあるのだから、騎手においても性別で区別があっても違和感はないと感じるが、この減量制度を「区別」ではなく「差別」と取るファンも少なからずいるだろう。何れにせよ、新ルールによってオーナーにとっては藤田騎手は魅力的な騎手となるだろうし、騎乗依頼も増える可能性は高く、現に制度が変わった後は良い馬への騎乗も増えている。
人気騎手としてもてはやされる中で成長を続けるのは容易なことではないが、壁を乗り越える回数が多ければ多いほど成長も期待できる。今後の、さらなる飛躍を楽しみにしたい。