「ブチコ」に「ゴールドシップ」なぜ人は"白い馬"に惹かれるのか?

今年は2頭の"白い馬"が世間を賑わせた。ゴールドシップとブチコである。

ゴールドシップはG1・6勝という輝かしい成績を持つ牡馬で、今年は阪神大賞典(G2)と天皇賞春(G1)の2つの重賞を制した。しかし続く宝塚記念(G1)ではダントツの1番人気に推されながらもゲート内で暴れてスタートが大幅に遅れ、結果は15着と大敗であった。良い意味でも悪い意味でもこちらの想像を超えた突拍子もない事をしでかす馬である。それでも多くの競馬ファンに愛されるそのキャラクターはまさに競馬界のアイドル的存在である。

もう1頭のブチコは白毛の馬体に茶色の斑点が特徴的な変わった模様をした牝馬である。立派なサラブレッドでありながら一際目を引くその模様はまるで牛のようである。ブチコは未勝利戦→条件戦と2連勝し、その後芝の重賞戦のチューリップ賞(G3)に初挑戦するも14着と大敗してしまう。その後またダートに戻りOP戦に出走するのだが、前走大敗したにも関わらず2番人気と人気が高い。しかしそこでも6着と凡走。続くユニコーンS(G3)でダートの重賞に初挑戦するが、5着に敗れてしまう。
ゴールドシップに比べると実績的には決して優秀とは言えない馬だが、そのキレイな白毛の馬体と愛くるしい模様から、何かと取り上げられることが多くて世間の目を引く馬である。

"白い馬"の人気の秘訣

この2頭に共通する点は両馬とも"白い"ということである。
ゴールドシップは正確に言うと白毛ではなく"芦毛"であり灰色に近い色のことを差すのだが、"白い怪物"という異名を持つことからも白い馬として認識されることが多い。

われわれ人間、いや、ほとんどの動物に言えることなのだが、日中に視覚を使って活動している動物というのは光の強さというものに敏感である。明るいモノには自然と視線が行ってしまう。そして白という色は色の中でも最も光を反射する色である。白いモノを目で追ってしまうことは動物としての習性であると言えるだろう。

こういった動物としての習性から、自然と白という色に好感を持つようになってくる。よく笑う人は白い歯をよく見せるので好感度が高かいといった話や、いつかは純白のウェディングドレスを着てみたいと夢を見たりするようなことは動物としての習性から来ているのかもしれない。

鹿毛や栗毛が多いサラブレッドの中で一際目立つ"白い"馬体をした馬がいればその馬を自然と目で追ってしまい、しらずしらずの内にその馬のレースの成績や今後のレースが気になっていってしまい、気付いたらその馬のファンになってしまう。

宝塚記念で圧倒的1番人気に推されたゴールドシップがゲートで大幅に出遅れた瞬間、ゴールドシップ絡みの馬券120億円が一瞬にして消し飛んだというが、それでも彼は愛され今後も注目され続けている。世が世なら暴動が起きてもおかしくなかったレベルの大敗も、彼の"白さ"がそれを吹き飛ばしてくれるのだ。

ブチコは女性にとくに人気を集めている。ブチコの模様が可愛くて仕方ないのだ。ブチコをパドックで引く厩務員はブチコのブチ柄に合わせて自分のネクタイやシャツや靴をブチ柄にして一緒に歩いている。チューリップ賞の時はブチコの尻尾にチューリップの飾りを付けて女子達の注目を集めた。こんなオシャレな牝馬がいたら写メを取らずにはいられない。あの名手C.デムーロ騎手もブチコの柄があまりに珍しいので写真を撮ってイタリアにいる母親に送ったそうだが、母親はすぐにブチコのファンになったそうだ。ブチコもまさに競馬界のアイドルなのである。

この2頭の人気は意外にも"動物としての習慣"がもたらしたものなのかもしれない。