今や世界を代表する名馬の1頭として挙げられるモーリス。昨年の安田記念を皮切りにマイルCSと香港マイル、チャンピオンズマイルを制覇し、破竹の7連勝で一気に世界のマイル王者にのし上がった。しかし、前走の安田記念では2番手からの競馬も、逃げ馬ロゴタイプに足元をすくわれる2着で連勝はストップ。常に勝つことの難しさを改めて認識するレースであった。そこで、今回はモーリスの数少ない弱点をこのコラムにてピックアップし、2000mへの適性にも触れながら解説していきたい。もちろん、当日は圧倒的一番人気に支持されるに違いない。ゆえに、そのモーリスの取捨選択こそが的中に向けて最も重要なポイントになる。ぜひ、読者の方は以下の内容を参考にしていただいた上で、前日予想にお役立ていただければと考えている。
さて、モーリス(モレイラ騎手)の不安要素は既に周知の事実と言っても良いが、以下の3点であろう。その3点とは①スタート難と②折り合い面、③2000mの距離適性である。
まず、1点目と3点目を片付けたい。①スタート難はデビュー2戦目の京王杯2歳Sの時から持つ弱点である。しかし、今回は焦る必要のない2000m戦。例えスタートで後手を踏んだとしてもゆったり運べるコーナー4つのコースなので、特に気にすべきポイントではないだろう。そして、③中距離路線への距離延長は血統的背景や馬体面を見ても全く問題ない。父スクリーンヒーローで、馬体もむしろ2000m辺りがベストな造り。また、3歳時には1800〜2200m戦を経験しており、距離の長さに戸惑うことはないはずだ。不安要素として挙げられる上記2点は、むしろ今回のレースで好転する可能性すらある。
モーリスの最重要課題・折り合い面は?!筆者が発見した折り合う条件とは?
ただ、②折り合い面に関しては気持ちの面が大きい為、非常に読みづらい部分がある。そこで、筆者はモーリスのデビュー戦以降15走を再度全て見直し、様々な視点から折り合いを欠く条件を全て洗いざらいにした。
そこから発見したモーリスの折り合いを欠く条件は以下の2点である。①2F目が一定ラップ以上の時計と②スタート後2F目までに外から被されず前に馬がいない状態の時は引っ掛かってしまう傾向にあるということだ。もちろん、上記は大出遅れをした場合を除くので、スタートを最低限やや出遅れ〜5分に近い形で出た場合に限る。
今年の札幌記念でモーリスは折り合いを欠くのか?!倉本匠馬のジャッジは?
上記についてさらに詳しく解説していこう。まず、①のラップに関する話を見ていきたい。言わずもがなであるが、スタート難のあるモーリスはスタート後の1Fは特筆するほどの早さがない。しかし、150〜350mの約2F目のラップが極端に早く走る傾向にあり、そこで先行勢がペースを緩ませると折り合いを欠く傾向にあるのだ。例として挙げられるのは、3歳時のシンザン記念や昨年の3月スピカSである。逆にその距離の間にラップが緩まないことで折り合いを最小限に抑えることが出来たレースもある。それは香港マイルとチャンピオンズマイル、昨年のマイルCS、安田記念などである。従来、一般的に折り合いを欠く馬はどの区間でもラップが緩むと引っ掛かってしまう。しかし、モーリスに関しては150〜350mの山場を越えればその後やや遅いラップを刻んでも比較的折り合いがつくタイプである。したがって、今回のレースもスタート後の150〜350mが勝負となるだろう。
一方で、②については単純な話である。これは①にやや関連することであるが、今年の安田記念を見ていただければ一番分かりやすい。やはり、スタート後に外から被される場面がないと、150〜350mで早いラップで走るモーリスにとってその区間で行く気になってしまう。しかし、それまでに外から被されるとやや行く気が抑えられ、前にさえ馬がいればぶつかる程の威力のある馬ではない。したがって、馬群で競馬が出来る云々ではなく、自分より外枠にテンの早い逃げ馬などがいれば問題ないのだ。
上記に取り上げた2点こそモーリスが折り合いを欠く条件である。では、今回の札幌記念に目を向けてみよう。今年は昨年のトウケイヘイローのような典型的な逃げ馬がおらず、唯一先行する可能性が高いレッドソロモンもテンに早いタイプではない。となれば、モーリスはどの枠順引いたとしても安田記念並に折り合いを欠く可能性が非常に高いと言えるだろう。したがって、スタートをスンナリと出てしまった場合はモーリスの暴走の可能性も否めない程と言える。むしろ、このメンバーであればスタートで後手を踏む方がモーリスにとっては楽に運べるだろう。
以上、モーリスの弱点を相当深いところまで追求した上で考察した。先ほども述べたように、レッドソロモン以外の馬が大逃げに出るかモーリスが出遅れない限り、世界的名手モレイラ騎手鞍上でも安田記念並に折り合いを欠いてしまう可能性が高い。そうなれば、昨年好走組のダービーフィズやヤマカツエース、香港カップ2着のヌーヴォレコルトなどに差されてしまう可能性も出てくる。もちろん、モーリスが折り合いを欠いた上でハナを切ったとしても逃げ切ることもありうるが、確実に引っ掛かる馬を100%信頼は出来ない。ぜひ、読者の方には上記の件を参考にして頂いた上でモーリスの取捨選択を見極め、予想的中にお役立ていただければと考えている。