新馬戦と中京2歳ステークス(OP)の2戦を豪快に逃げ切って優勝したシュウジ(牡2)が今、注目の若手としてブレイク寸前である。
父キンシャサノキセキ、母カストリアという珍しい産駒だが、両親の良い部分をしっかりと受け継ぎその血統の強さを世間に知らしめた。この馬はスピードだけでなくパワーもある。まるでダート馬かと思うほどトモが盛り上がっており、2歳馬とは思えない馬格の持ち主だ。大きなお尻は母親のカストリア譲りだ。兄弟のツルマルレオン(父ハーツクライ)のトモの肉付きの良さも母カストリアから譲り受けておりそっくりである。G1に手が届かなかった兄の夢を半弟のシュウジが受け継ぐかたちとなった。
これまでの2戦は圧勝だった。新馬戦ではほぼ馬なりで少し追っただけで逃げ切りV。余裕を感じさせる勝利に次走も期待が高まった。そして2戦目の中京2歳ステークス(OP)では距離をマイルに伸ばして挑戦。1番人気に推されたマイル戦でも終始先頭をきって後続を寄せ付けずに逃げ切って勝利した。ここでも力が違ったようだ。
次走のレースが注目される中、発表されたローテーションに驚かされた人も少なくないのでは。1400m→1600mと進めてきて、3戦目に選んだのは1200mの小倉2歳ステークス(G3)だった。血統的には2000mまではこなせそうだが、あえて1200mを選んできた理由は一体なぜだろうか?2つの理由を推論してみた。
(1)スプリンターとしての可能性を見るため
これまでの2戦とも逃げ切って勝っているが、その走りは逃げ馬のフットワークではない。馬なりで他馬より早く先頭に立ってしまい、上りもほぼ最速なのでただ単に力が違いすぎただけの話。逃げたいから逃げたわけではない。となるとまだこの馬本来の姿は見せていないことになる。
父キンシャサノキセキは高松宮記念(G1)を筆頭に数々のスプリント重賞を勝っているし、兄弟のツルマルレオンも北九州記念(G3)を勝ち、小倉1200mで好走している。父も兄も1200mを主戦場に活躍していることからシュウジにもスプリンターの血が流れていると考えるのは至極当然のことであろう。賞金の加算もし易いし、スプリント能力を図るには小倉2歳ステークスはちょうど良いレースだということだ。
(2)引退前に故郷へ錦を飾るため
調教師の橋口弘次郎師(69)は来年の2月に引退することが決まっている。今年のダービーは調教師として最後のダービー挑戦だったがダノンメジャーで敗れて手にすることが出来なかった。最後は思い入れの強い地元九州で最後に思い出を作りたいという気持ちが少なからずあるのかもしれない。
橋口師は宮崎県生まれの九州男児。大学卒業後は地方の佐賀競馬で騎手として活躍していた。厩舎を開業した現在、小倉の重賞は9勝しており、あと1勝で10勝を達成する。最後に地元九州の地で重賞10勝目を達成し、地元に恩返しをすることが自身への最高の退職祝いとなるのではないだろうか。
シュウジという名前は競馬好きの劇作家として有名な寺山修司氏の名が由来であるが、皮肉にも寺山氏は逃げ馬が大好きだった。これまで逃げ切り勝ちをしてきたシュウジだが、スプリンターとしての能力を発揮して小倉を勝ち、橋口師の夢を叶えることはできるだろうか。