年に2回行われる天皇賞だが、春の天皇賞と秋の天皇賞では全くレースそのものが変わる、春の天皇賞は距離も長くスタミナ重視のどっしりとしたレースを行えて、道中のかけひきが多くなるレースに対して、秋の天皇賞は東京競馬場の長い直線とはいうものの、クラシック向きの馬にはやや短めの距離で、マイラータイプの馬にとってはやや長い感じのあるレースだけに展開や予想も難しいレースになりやすいのが特徴だ。
世界一となった逃げ馬エイシンヒカリ
初戦こそ4番手追走からの勝利だったが、その後は「逃げ」一手で重賞挑戦まで5連勝。マイペースで逃げたら、とてつもなく強い馬。それがエイシンヒカリだ。
初めての重賞挑戦は、後続馬の徹底マークにあい9着と惨敗するも、その後の2015年天皇賞(秋)まで勝ち星を重ねて3連勝。そして迎えた天皇賞(秋)本番では2番人気に押されて、ファンからの期待は高まった。
しかし、ここは逃げ馬には非常に難しいコースだ。古くからの競馬ファンならサイレンススズカの大逃げ、そして故障を思い出すコースでもある。あの時の武豊が、今度はエイシンヒカリで逃げを打つのか。しかし、まさかの田辺騎手騎乗のクラレントが逃げる展開となった。エイシンヒカリは2番手追走。4コーナーを回るときは、まだまだ足をためていたが、残り400mから伸びを欠き、9着惨敗。GⅠをとることは出来なかった。
しかしその後、エイシンヒカリは海外競馬に活躍の場をうつす。香港、フランスとGⅠを連勝し、海外で名声を得た。イギリスのGⅠでは、1番人気に押されながらも、馬場が合わなかったのか6着と敗れてしまった。
1着以外の凡走が非常に目立つ戦績はいっそ清々しさも感じるが、馬券を買う上では非常に厄介な存在ではある。
最強マイラーモーリスが中距離でも力を示す!
モーリスは典型的なマイラ―タイプの馬で、過去の実績でもGⅠ出走は全て1600mのマイルレースだ。1600mのレースでは過去に1度も掲示板をはずしていない安定感もある。東京では過去3レース出走している。デビュー年に京王杯2歳ステークスで6着に敗れてはいるもの、安田記念での1着と2着があるため、東京競馬場への適性への不安はない。
特に2015年からの出走レースでは、GⅠ4連勝を含み1度も連を外していない安定感は今回のレースでも上位人気に位置するのは確実だ。昨年末の香港マイルとチャンピオンズマイルで海外GⅠ連勝を果たし、世界のマイル王と呼ばれるまでに成長した。
天皇賞(秋)が行われる2000mの経験は前走の札幌記念だけだが、若干の不安視はされたものの2着となりさすがの安定感を見せた。ただ、東京への適性に問題はないが札幌と東京では芝からして根本的に違うため、そのあたりの評価の足し引きが要となるが、鞍上に迎えるムーア騎手はこれ以上ないと言っても過言ではない強力なジョッキー。駆け引きやコントロールに関しては全く不安はないだろう。
やはり鍵となるのはマイル以上の距離への適性。本格化前とは言え京都新聞杯2200mでの7着など、2000mまではギリギリ対応できるのかどうかといったジャッジが必要。
世界最高峰にして絶対的ではない2頭
海外GⅠ勝利と、とてつもない大きな経験をしたエイシンヒカリが、次は日本のGⅠに奪取に挑む。昨年煮え湯を飲まされた舞台で、今度こそマイペースの逃げを打ち、その実力を再度見せてくれるのか。
あるいはモーリスが昨年から繰り出す絶対的な安定感を2000mのこの舞台でも見せてくれるか。
大ゴケする可能性のあるエイシンヒカリに、マイルから2F延長のGⅠ挑戦のモーリスは、その他にGⅠウィナーだけでも多数名前を連ねる豪華な天皇賞(秋)となっただけに、世界的に名前を売った両馬とは言え絶対的な信頼感を得づらい立場にいる。
予想は非常に難しくなったが、豪華面子の競演を間近に見られるチャンスはそうそうない。ぜひ楽しんで当日を待っていただきたい。