いよいよ古馬最高峰の戦い、秋の天皇賞が幕を開ける。今年は豪華なメンバーで登録馬が発表された時から興奮が冷めやらない。
今回は人気上位の中でも多くの注目を集めている馬、モーリスについて考察してみたいと思う。多くの競馬ファンが気がかりなのはやはり距離の不安だろう。これまでマイルの舞台で圧倒的な活躍を見せてきた馬だが、2ハロンも伸びた2000mの舞台では「さすがにパフォーマンスが落ちるのでは…?」と疑問に感じるファンも少なくないのではなかろうか。
果たしてモーリスは2000mでも強いのか?
筆者が出した答えは「ノー」。この結論もこれから説明する見解もあくまで筆者の個人的な見解なので参考程度に聞いてもらえれば幸いである。
まず、モーリスは距離を短くする分にはプラスに働く可能性が高いと感じるが、距離を伸ばすとパフォーマンスは落ちるのではないか?と考えた。というのも、モーリスの武器はその圧倒的なスピード能力の高さにあるのだが、スピード能力が高すぎる故にレース中盤でペースが緩むようなことがあったりすると折り合いを気にしてしまい、能力が十分に発揮されなくなる。2走前の安田記念なんかはまさにこのケースで、中盤が緩む瞬発力勝負となった同レースでは引っ掛かってしまい、2着に敗れて連勝もついにストップする結果となった。
その点、今回逃げ馬として注目されているエイシンヒカリは中盤緩んでも番手でも競馬でき、ロゴタイプなんかも安田記念の時のように出だし早くなくても行く馬がいなければハナへ出ていくことができる器用さがある。今回この2頭が序盤でどういう動きをするのかも天皇賞秋の見どころの一つである。
話をモーリスに戻すが、安田記念ではなんとか2着に健闘したとは言え、やはり緩急を必要とするような中距離路線ではエイシンヒカリやロゴタイプのような馬の方が向いているように思えるのだ。
ハイペースになれば折り合いの心配もしなくて済むのでは?
確かに中盤ペースが流れてくれればモーリスにとっては願ってもない展開となる。ここで鍵を握るのが逃げ馬エイシンヒカリである。最内1番に入ったことで逃げて行くのが濃厚となったが、果たして武豊騎手はハイペースで逃げるという手を取るだろうか?
ご存知の方も多いと思うが、彼のお手馬の逃げ馬にトウケイヘイローという強い逃げ馬が昔いた。この馬は重い洋芝の函館を前半1000mを58.8秒で走るような馬なのだが、2013年の天皇賞秋では前半1000mを58.4秒のペースで逃げた。しかし結果は直線半ばで一気に捲られ10着に敗れるというものだった。
過去10年の逃げ馬の成績(0-1-0-9)を見ても逃げ切りが厳しいのは明らか。エイシンヒカリも逃げれるロゴタイプもハイペースにしたがっていると思い込むのは危険。そうなるとやはりスロー~ミドルペースになるのでは、という結論に至る。
だからモーリスは負けるだろうということではなく、モーリスにとっては課題となる折り合いを克服しなければならない場面が来るかもしれないということを頭に入れて予想するのがベスト。今年の天皇賞秋は15頭と少頭数だし、モーリスの鞍上を世界の名手R.ムーア騎手が務めるのも心強い。ムーア騎手がモーリスとコンビを組むのは今回で4度目で、この馬でG1を2勝しているムーア騎手ならあるいは、と期待度が高いのも事実。かたや異次元の逃亡者の異名を持つ逃げ馬サイレンススズカと同じ1枠1番に入ったエイシンヒカリにもドラマがある。今年の天皇賞秋はなんと予想のし甲斐があるレースだろう。どんな結果になろうとも、最高の天皇賞秋になる気がするのは筆者だけだろうか。レースの瞬間まで、楽しみは一向に尽きない。