今年のクラシック戦線は「最強世代」として昨年からずっと盛り上がりを見せていました。それを証明するかのように、春までの群雄割拠を勝ち残り皐月賞で上位3頭を構成した3強が見事に1冠ずつ分け合う形となりました。
最強世代論争が巻き起こると、肩身が狭いのがその前後の世代のファンたち。果たして自分の応援していた馬は弱かったのだろうか?せっかくGⅠを勝っても、相手が弱かったからと言われてはショックですよね。
今年の3歳世代が最強世代ならば、4歳世代はなんなのだろうか?世代が弱かったからドゥラメンテが2冠につけたのだろうか?振り返ってみれば、そんなことはないということがお分かりいただけるかと思います。
当のドゥラメンテは、皐月賞・東京優駿の二冠に輝いたのち負傷により三冠目には挑戦ができなかったものの、故障明けで古馬となり挑んだ初戦中山記念では上の世代たちを押しのけアンビシャス、リアルスティールとともに同世代3頭でフィニッシュを飾っています。
天皇賞(秋)出走のうち、今回はこのアンビシャス・リアルスティールについて書いて行きたいと思います。
潜在能力は十分GⅠクラス、悲願達成なるかアンビシャス
昨年の天皇賞(秋)で、3歳馬ながら果敢に挑戦し、4番人気5着と健闘したのがアンビシャスです。クラシック本番はめぐり合わせも悪く三冠ともに出走も出来ませんでしたが、前哨戦とも言える共同通信杯ではリアルスティール、ドゥラメンテにつぐ3着。毎日杯でも3着と素質を期待された1頭でした。
菊花賞は距離不安や、騎手都合などにより回避となり、一足早く古馬とのレースへと向かいました。結果は毎日王冠6着、天皇賞(秋)5着と、年齢の壁を打ち破るにはいたりませんでしたが、健闘をみせました。
そして、今年の春は先述のとおり初戦の中山記念でドゥラメンテに肉薄するクビ差の2着。続く大阪杯では、当時の菊花賞馬、後の天皇賞馬キタサンブラック相手に、スローペースを先行して勝利と、自在性を見せると同時に、その能力がGⅠ級であることを、誰の目から見ても明白にしました。
しかし、残念ながら、GⅠ勝利を期待された宝塚記念では、人気を背負って16着と大凡走してしまい、悲願達成はなりませんでした。
今年の秋は、昨年同様毎日王冠から始動して、後方からの競馬で2着と、昨年以上の順調さで本番を迎えています。それだけに、陣営がこの天皇賞に賭ける思いはかなりのものがあるはずです。
大阪杯では先行したとは言え、基本的に後方から差す競馬が得意な馬なので、府中は絶好の舞台で過去に5戦して【1-1-1-2】の好成績。
更に2000mは3戦して2勝。負けたのは昨年の天皇賞(秋)で、先述した通り3歳時のものでしかも5着には入っていますから、間違いなくベストな条件でしょう。
今年も同じローテーションをとり、昨年5着だった毎日王冠では2着になり、6着の雪辱を果たすべく、再度天皇賞(秋)へ挑みます。
安田記念大凡走の借りを返せるかリアルスティール
クラシックシーズンは共同通信杯こそとったものの、ドゥラメンテ、キタサンブラックに阻まれ、あわや歴代善戦マンに肩を並べるかといったところでしたが、今年春のドバイ遠征におけるドバイターフにて、悲願のGⅠ制覇を海外で成し遂げましたリアルスティール。
凱旋帰国後に人気を背負って国内GⅠ初勝利を賭けて臨んだ安田記念では、2番人気ながら終始掛かり気味で、良いところ無く11着と完敗してしまいました。エイシンヒカリ同様、国内でのGⅠ勝利の方が難しいという、昨今の日本競馬にありがちな結果となりました。
ただ、国内最強と言われたドゥラメンテに匹敵する実力を認められている馬である以上、明らかに順調さを欠いた前走の大敗は、さほど気にする必要はありません。
安田記念以外はGⅠ含めて全て4着以内と常に安定性の高い成績を挙げていることもあり、無視することのできない1頭だといえます。とは言え、前走で大崩れのまま休み明けの今回なので積極的に推せるかどうかは難しいところ。
距離は菊花賞2着こそあれ、厳しい流れとなったダービーでの様子を見る限り、2000m前後が適性と見て間違い無さそうなので、この天皇賞(秋)は、国内GⅠ初制覇の舞台としては合っているはず。
また、主戦の福永騎手から、ミルコ・デムーロ騎手へと乗り替わりになるというのも注目のポイント。国内では福永騎手以外が乗るのは初めてのこと。初のGⅠ制覇となったドバイターフでも結果としてはR・ムーア騎手との乗り替わりでした。
実力馬であることは間違いないが、凡走後の休養明け一発目であること、テン乗りのデムーロ騎手などと不確定要素が多いだけに、評価の別れる1頭となるでしょう。