岩田康誠騎手は24日、阪神競馬場の6Rの返し馬で藤懸貴志騎手に幅寄せし、粗暴な言動をしたことにより、25日から5月8日まで開催4日間の騎乗停止処分を受けた。これにより、同日11Rで行われたマイラーズCのケイデンスコールなど、騎乗予定であった全6頭が乗り替わりとなった。
発端は阪神2Rの3歳未勝利で、今年デビューした新人騎手の角田大和騎手が4コーナーで外側へ斜行した際、藤懸騎手が被害を受け、立ち上がるシーンがあった。その直後にいた岩田康騎乗も連動する形であおりを受けたため、レース後は両者ともに被害者として裁決室に呼ばれた。
藤懸騎手が立ち上がってしまった点については、「立ち上がるほどでない、耐えれた」というのが岩田騎手の主張とされているが、裁決委員はこれを認めず。納得がいかなかった岩田騎手は、阪神6Rの返し馬で馬を寄せて粗暴な発言をし、藤懸騎手はラチとの間に挟まれそうになった。
これを見ていた複数の騎手が、放置できない事態だと問題視し、裁決委員に通報。JRA側が岩田康騎手を聴取したところ、粗暴な行為と発言があったという事実を認めたため、日本中央競馬会競馬施行規程(第147条の第20号)の「競馬の公正確保について業務上の注意義務を負う者としてふさわしくない非行のあった者」を適用し、騎乗停止処分を科した、というのが一連の経緯である。
他の騎手が裁決委員に通報するほどであった点や、他メディアが報じた岩田騎手の実際の言動を見ると、かなり強い口調で暴言を発していたことが予測できる。
“ゆがんだ特権意識”と“気持ちの切り替えが出来ない”ことの危険性
組織の中で高い役職を務めた人は自分が“特別”であるという意識が強くなり、普通の人には許されないことでも許されると思いがち。その意識は“自分は正しい”症候群を悪化させやすい。地方競馬からトップジョッキーの仲間入りをした岩田騎手がこうした意識を持ち始めていた可能性がないとは言い切れない。
支配欲求が強くなり、思いどおりにならないとすぐに怒りだしたり、人を排除したり攻撃したりするのも特徴だというが、今回の一件はまさにこの特徴に当てはまる。こうした怒りは、相手を肉体的・精神的に傷つけ、自身の心身にも悪い影響を与える傾向があり、職場や学校、家庭などで、生活に支障をきたすこともある。
岩田騎手は今回、阪神2Rで起きた一件に納得がいかず、気持ちの切り替えが出来ずにいた。約2時間半後の阪神6Rになっても怒りが収まらず、藤懸騎手へその怒りをぶつけた。
その結果、開催4日間の騎乗停止処分を受け、その後騎乗予定であった全6頭の騎乗機会を逃した。11RのマイラーズCでは急遽代打でケイデンスコールに騎乗した古川吉洋騎手が差し切りVを果たし、重賞3勝目を達成。古川騎手自身は今年1勝目となる重賞勝利を果たしている。
過去の粗暴事件と比較すると「開催4日間の騎乗停止処分は甘すぎるのでは?」という声が関係者やファンの間で囁かれているが、本来穫れたはずの重賞勝利を逃し、パワハラまがいの恫喝や暴言を若手の後輩騎手に浴びせたことで、一部のファンの信頼を失ったと考えると、払った代償は大きいと言わざるを得ないだろう。
ジョッキーという職業に限らず、仕事においてゆがんだ特権意識を持つことや、気持ちの切り替えが出来ないことは大きな損害になることを、改めて考えさせられた一件であった。