競馬はブラッドスポーツと呼ばれるが、良血馬がその血統の良さ通りに走るとは限らないのも競馬の魅力の一つ。しかし、良血馬が良血馬らしい圧巻の走りをするのもまた魅力なのである。そんな競馬界において光り輝く良血馬2頭を紹介したい。
最強GⅠ馬を破った能力が本物かどうかの試金石
今年の札幌記念で、天皇賞・秋を制覇した最強マイラー・モーリスを退け逃げ切るという大金星を挙げたネオリアリズム。この時の3着だったレインボーラインは後の菊花賞で2着にも入っている。倒した相手や勝ちっぷりから見ても、単に人気薄の展開がハマった激走という形で切り捨てるのは早計だろう。
一方で、これまでの重賞での戦績は、小倉大賞典の3着が最高であった。重賞出走のキャリア自体が少ないことを差し引いても、いきなりのGⅠでは、全幅の信頼を置くことが出来ないのも事実。また、当馬のこれまでの戦績を見るとマイル以下の出走歴がない。つまり、今回のマイルCSが初の短距離戦であることもマイナス材料。
ただし、母はスプリント戦で良績を残したトキオリアリティー。兄弟に短距離のトップクラスで活躍したリアルインパクトとアイルラヴァゲインがおり、血統的にはむしろマイルでこそという評価も十分可能なところが更に予想を難しくさせる。
加えて、マイルのGⅠでは、むしろ中距離に対応できるだけのタフさが必要になることも多く、1800m以上で好走してきた当馬にとってプラスの要素となっている。
脚質的には先行から差しのどれも可能であり、札幌記念で勝ったとは言え、逃げる必要は全くない。そういう意味で有利不利は特になく、展開次第で自在に立ち回れる強みがある。
世界的にも希少な超良血馬ディサイファ
ディサイファは、父ディープインパクト、母父がドバイミレニアムとなっている。父はもはや日本では説明不要なので割愛をするが、血統好きとして目を惹くのはこの母系なのである。ドバイミレニアムは、その名に込められた願いどおりに2000年のドバイWCを圧巻の走りで制した希代の名馬。その有り余るスピードを後世に伝えることを嘱望されたものの、何と種牡馬入り初年度に早逝。産駒も一世代、56頭しか残せなかった。
ディサイファの母は、この数少ない貴重なドバイミレニアムの直仔。同じ年に生まれたドバウィは、その後父の無念を晴らすかのように次々と優秀な産駒を送り出していることからも血の優秀さは疑いようもない。
さらに血統を遡れば、ダンチヒ、リボー、レイズアネイティヴとキラ星の如き名種牡馬の名前が見受けられる。まさしくBest to Bestを地で行くような血統だ。
ディサイファ自身にとって芝のマイル戦はこれが二戦目。年齢は7歳と高齢の部類に入ってきてはいるが、大舞台に強い母系を見るとあまり気にもならない。
初のマイル戦だった安田記念では、着順こそ6着だったものの勝ち馬からは0.3秒差。2着だったモーリスとは殆ど着差が無かっただけに、初挑戦としては十分すぎる結果だろう。
今回はディープインパクト産駒得意の京都競馬場芝外回りになるだけに、そのスピードは十二分に生かせるはず。前走の毎日王冠も直線で不利があっての6着だけに、さして悲観するようなものでもない。
混戦と言われるマイルCSだが、終わってみれば超良血のディサイファがアッサリなんてシーンもあるだろう。人気が無ければ、積極的に狙ってみたい一頭である。