忘れ去られつつある秋古馬王道「天皇賞(秋)→ジャパンカップ→有馬記念」というローテーション。それぞれ格式高いレースであり、出走するのも栄誉なことだけに、有力馬を酷使するのが避けられる近代に於いては中3週ずつの3連戦というのは時代が合わないのかもしれない。
今年は天皇賞(秋)からのローテーションを取りジャパンカップへ出走するのはリアルスティール(牡4・栗東・矢作)、ルージュバック(牝4・美浦・大竹)のたった2頭だけとなった。
このローテーションも伊達に王道と言われているわけではなく、過去10年のジャパンカップ勝ち馬を見ると、前走に天皇賞(秋)を選んでいる馬は延べ10頭中6頭、実に60%になる。ジャパンカップ勝ち馬の過半数が選択してきたローテーションを今年2頭しか取っていない。確実に要注目と成る2頭を改めてご紹介したいと思う。
無冠の女王ルージュバック
牡馬を相手に重賞3勝、男勝りな牝馬というのがルージュバックの持つ称号だ。
牝馬クラシック戦線は桜花賞9着、オークス2着、秋華賞は不出走とついに戴冠はならなかった。ただ、ルージュバックが最後の直線で見せる切れ味は本物だ。
競馬の格言に「府中の千八展開いらず」とあるが、実力が出やすいその府中1800mでエプソムC、毎日王冠と重賞連勝を飾った。いずれも中団やや後方から牝馬らしいスパッとした切れ味で牡馬を蹴散らした。それがルージュバックの本格化を予感させる走りだったのは誰もが認めるところだ。
しかし、前走の天皇賞(秋)では、3番人気に支持されながらも7着と敗れた。さすが古馬GⅠだけあってモーリスやエイシンヒカリなど牡馬一線級が相手となると理想通りのレースをさせてもらえなかった。それでも勝ち馬のモーリスとは0.6秒差で、力負けは決してしていない。
次走予定のジャパンカップはオークスで僅差2着した舞台でもあり、相手こそ違うが不足はあるはずがない。リベンジの意味も込め、陣営は密かに意気込んでいるはずだ。
世界を獲った馬、リアルスティール
リアルスティールは、父ディープインパクト。母ラヴズオンリーミーからなる牡馬だ。
デビューの新馬戦から共同通信杯と2連勝を飾り、勢いそのままに皐月賞、ダービー、菊花賞とクラシック3戦に出走するも、いずれのレースも勝ちきることができなかった。
実力はあるものの勝ちきれないレースが続くなか出走した国際GⅠドバイターフでは、悔しい思いをした国内クラシックの雪辱を果たし、初のGⅠ制覇を海外で成し遂げた。
凱旋して出走した安田記念では思うようなレースが出来ず、前走天皇賞(秋)では7番人気ながら上がり最速の脚を見せつけるも、モーリスをとらえることが出来ず2着という結果になった。
海外GⅠを制したものの、国内のレースにおいてなかなか結果がついてこないリアルスティールだが、次走のジャパンカップに向けて陣営は気合十分といっていいだろう。
ジャパンカップは昨年のショウナンパンドラ、ジェンティルドンナの2連覇、さらにブエナビスタやウオッカなど牝馬との相性が良いレースだけに、ルージュバックにもチャンスが十分ある。もしもここを勝利すれば、歴史的名牝たちと肩を並べることができるルージュバック。
それに対し、リアルスティールの調子はタイムを見ても確実に上がってきている。鞍上には天皇賞(秋)をモーリスで制し、世界ナンバー1ジョッキーとの呼び声高いライアン・ムーアを迎えた。リアルスティールのポテンシャルを知り尽くした男を鞍上に、世界を制したドバイターフのコンビが復活する。