左周りもなんのその。今のキタサンブラックの充実ぶりには目を見張るものがある。完全に中距離馬としての地位を確立し、GⅠ・2勝は古馬の大将格と言ってもよいほどの実績。今回のジャパンカップでも人気上位は間違いないだろう。2勝したGⅠは菊花賞、天皇賞(春)といずれも長距離GⅠレース。父ブラックタイド、母父サクラバクシンオーから考えると一般的な常識を根底から覆すほどのインパクトだった。
しかし、それほどの実績を残しているにもかかわらずキタサンブラックはレースでは1番人気になることがほとんどなく、前走が初めての1番人気となった。原因はこの馬の勝ち方にある。大逃げをして勝つ馬や、最後に猛烈な勢いで追い込んで勝つ馬などは、勝ち方の派手さから過大評価されたりするが、反面この馬のように、逃げる馬がいなければ逃げ、逃げ馬がいれば好位に控えるといった器用なレースをして、勝つ時も派手な勝ち方をしないタイプの馬は評価がされにくい傾向がある。
キタサンブラック勝利の方程式
キタサンブラックは抜群の勝負根性を持っている。先ほど中距離馬と書いたが長距離馬に限りなく近い中距離馬と言うのが正しい表現なのかもしれない。どのような展開であっても大崩れすることが少ない安定感があり、馬券外に消えたのは唯一日本ダービーの14着だけ。ここに関しても、関西馬でありながらデビューから5戦連続で関東への輸送競馬だったことによる疲労だともいわれており、実際に過去には東京競馬場でも強い勝ち方をしており、完全覚醒した今なら惨敗を喫した府中の2400mを先頭でゴールインする姿は容易に想像できる。
逃げても番手でも折り合いが付き、コントロールは武豊騎手が完全に手の内に入れている。理想のパターンはスタートして、行く馬がいたらそのまま番手で大名マーク。徐々に逃げ馬にプレッシャーをかけ、3コーナー過ぎで潰してしまい、後はそのままロングスパートを決めるのがキタサンブラックの王道パターンだ。これ以外にも単騎逃げと言うスタイルも持っているキタサンブラック。更に、控えても競馬ができるというのは成長の証。前走京都大賞典も快勝してきた。今度は府中の舞台で関東圏のGⅠを制覇し、競馬の「まつり」を更に盛り上げる。