28日、中国本土で従化競馬場がついにオープン!賭博禁止の本土に、なぜ競馬場を?

香港ジョッキークラブ(HKJC)は8月28日、中国広東省に建設していた従化(ツォンファー)競馬場をオープンさせた。現地で開かれた開会式には、本土と香港特別行政区の政府関係者、クラブのメンバーと騎手、そしてプロジェクトの開発に携わったパートナーを含む500人以上のゲストが出席し、オープンを祝った。

香港ジョッキークラブ会長のサイモン・イップ教授は、開会式にて、同施設について以下のようにコメントした。

「香港ジョッキークラブは、競馬競技の世界的リーダーであり、世界のいくつかのトップ競走馬のホームでもあります。従化競馬場は、我々のレースレベルの卓越性を高めることを可能にするでしょう。本土初の世界トップクラスの馬の病院や、馬の訓練とケアの優れた施設を持っています。従化区は空気と水の質も高く、高い環境基準を持っています。馬を訓練する絶好の場所と言えます。」

従化競馬場は、中華人民共和国広東省広州市の市轄区である従化区に位置し、1周2000メートルの芝調教馬場および1800・1600メートルの全天候調教馬場と、芝1100メートルの坂路調教馬場、および最大650頭の競走馬を収容可能な厩舎を備えた巨大な施設だ。

広州から車で約1時間、シャティン競馬場から車で約4時間半の場所に位置する同競馬場は、シャティン競馬場の補完的な役割として作れたとされているが、これだけ大規模な競馬場としては本土では初となる。

賭博が禁止されている中国本土に、なぜ競馬場を?

中国本土では現在、馬券発売は法律で禁止されている。そのため、従化競馬場は馬券発売をともなう競馬を導入するためのものではないとされており、来年には馬券発売を伴わない競馬も行われる予定となっている。

香港ジョッキークラブが同施設に投じた金額は実に37億香港ドル(約526億円)とされているが、わざわざ国境を越えて馬券が発売されない国にここまで大規模な施設を建設する理由はなぜだろうか?

香港ジョッキークラブCEOであるウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス氏が、昨年12月に行った競馬記者との懇談の席で公表した内容によると、従化競馬場がある従化という地区は温泉が出るリゾート地として知られており、観光資源の1つとして競馬が根付くことを将来的な目標としているという。

中国本土の馬券販売解禁を見越して、香港ジョッキークラブが先行投資をしているという声もあるが、本土では今年1月末に中国公安部が賭博犯罪の取締り強化を号令したばかり。今夏に行われたワールドカップロシア大会時には、広東省だけでも賭博容疑で540人が逮捕されたほか、賭博資金2.6億元(約44億2000万円)が凍結されたというニュースが現地メディアでも報じられている。取締強化の流れが進む中で、果たして本当に競馬でのギャンブルは解禁されるのだろうか?

中国の競馬の歴史を見てみると、90年代には広州と北京に競馬場が建設され、馬券の発売もされていた。しかし、その後場外賭博行為が激しくなり、競馬場は営業停止となっている。2000年代初めに再び競馬解禁の提案が出ると、非賭博性のレースが開催されるなどの動きが出始めた。今後解禁の流れが進めば、再び馬券発売が解禁される日は来るかもしれないが、禁止と解禁と繰り返している状況からしても、再び禁止となる可能性も高く、根付くには相当な時間を要しそうだ。

そう考えると、ブレスケス氏が言うようにリゾート地とするための新たな観光業態の一つというのは、とりあえずの目標としては十分かもしれない。実際、ギャンブルを禁止しているドバイでも競馬が根付き始めているという例もある。何れにせよ、馬券発売を含めて今後競馬産業に本腰を入れる可能性は否定できない。そうなった場合、中国の資金力を考えると莫大な賞金が賭けられた大規模なレースが開催される可能性もあり、大きな反響を呼ぶことは間違いないだろう。