今ひとつブレイクできない?ハービンジャー産駒の可能性について探る

毎年GI馬を輩出し、5年連続(2012~2016年)でサイアーランキング1位に君臨するディープインパクト。個人的には「どんな貧弱な母系でも産駒が走った」父サンデーサイレンスほどの偉大さは感じませんが、先日、史上最速でJRA通算1300勝という大記録を打ち立てたわけですから、やはりディープも大種牡馬の1頭ですね。

しかし、活躍馬が増えるにつれ懸念されるのが「血の飽和」。幸い、サンデーの血を持たないキングカメハメハの奮起によって増殖し続ける「サンデー系牝馬」からも活躍馬は出ていますが、2016年度サイアーランキングの上位10頭で非サンデー系は、2位キングカメハメハ、6位クロフネ、10位サウスヴィグラスのたった3頭だけ。さすがに限界があります。

だからこそ毎年のように、社台グループがサンデー牝馬に種付けできるようにと各国の名だたる競走馬・種牡馬を導入してくるわけですが、ワークフォース、タートルボウルなど正直期待ほど走れていないというのが実情。

今回の主役ハービンジャーも、そんな輸入種牡馬の中の1頭。良質牝馬を多く集め、2014年に産駒がデビュー。遅咲きと見られていたわりに2歳戦から動けるタイプが多く、初年度から重賞勝ち馬(ベルーフ)を輩出。2年目の産駒からも重賞勝ち馬(プロフェット、ドレッドノータス)を送るなど、いい意味で期待を裏切る順風満帆なスタート。サンデー系牝馬との相性の良さも、まさに狙い通りでした。

すぐにGI馬も出てくるだろうと期待されましたが、その後産駒はいくつもの壁にあたります。「GI向きの底力がない」「意外に成長力がない」「短距離はもちろんだが、長距離も合わない」「ダートがからっきしダメ」「瞬発力勝負が不得手」などなど、次第に産駒の弱点が明るみになるにつれ、ハービンジャーも期待外れだった・・・との声が聞かれるようになってしまいました。中でも一番痛かったのは、産駒の得意距離がディープ産駒の庭である中距離(1800~2200)に集中していたことです。

では、ハービンジャー産駒に残されたGI制覇の可能性は?

それは先週3勝の固め打ちを決めた小倉競馬にあったように思います。元々、パワータイプで坂コースに強いというイメージがありましたが、最近の傾向から産駒の大半は小回り向きであるということがわかってきました。そもそも、重賞3勝もすべて内回りコースです。となると、GI制覇のチャンスは小回りコースが絶対条件。小回りコースのGIとなると「皐月賞」「有馬記念」「宝塚記念」「秋華賞」などですが、これに加えて今年から阪神内回り2000で行われる「大阪杯」がGIへと格上げされました。

あらゆるカテゴリーの馬が集まるドリームレース向きの底力がないだけに、距離適性も含めてGI制覇の可能性があるのは大阪杯ではないでしょうか。今週の小倉大賞典でベルーフが復活の狼煙をあげてくれるようなら、その可能性も十分だと思います。