日本の競馬は"イージー"なのか?凱旋門賞への挑戦することの意味とは?

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今月12日、札幌記念への出走が予定されていたルージュバックが函館への移動や到着後の環境の変化で発熱してしまい、同レースの出走を回避することが明らかになった。札幌記念の結果次第では仏の凱旋門賞(10/4、G1)へ挑戦する可能性が高かったのだが、今回国内の輸送で体調を崩してしまったので仏への遠征も厳しいか。札幌記念の出走も回避することとなった時点で凱旋門賞へ出走する可能性はほぼ皆無となった。

凱旋門賞今年は参加馬"ゼロ"か

他にも凱旋門賞へ登録している日本馬は4頭いるのだが、他の馬はどうだろうか。

  • エピファネイア(牡5)
  • ドゥラメンテ(牡3)
  • リアルスティール(牡3)
  • ワンアンドオンリー(牡4)

上記の4頭が凱旋門賞に登録している。

エピファネイアは左前けいじん帯炎を発症し、出走予定であった宝塚記念も回避している。その後凱旋門賞も断念することがすでに管理する角居厩舎から発表されている。
今年のダービーを制したドゥラメンテもダービー後に両前脚の骨折が判明し、今秋の出走計画は白紙になってしまった。復帰は来春になる予定で、事実上凱旋門賞の出走も無くなった。
日本ダービーで4着に終わったリアルスティールもダービー後に左第1指骨を剥離骨折してしまった。負荷がかかる遠征は見送り、秋は国内に専念することが決まっている。
そして昨年のダービー馬であるワンアンドオンリーも、現在の状態面の悪さから国内のローテーションを組むことが決まっている。

なんと登録している全ての馬が凱旋門賞を回避することがほぼ決まっているのだ。

筆者はこのことが残念でならない。凱旋門賞へ挑戦することは日本の競馬界にとって非常に重要なことであると感じているからである。もちろん、各馬事情があっての回避なので致し方ないことではあるのだが、日本馬が凱旋門賞で活躍することを心待ちにしていた競馬ファンは筆者だけではないはず。

世界へ挑戦すること

日本という国は競馬に限らず様々な分野で独自のスタイルを持っている。携帯電話の市場でも世界標準を無視した"ガラパゴス携帯"が生まれたり、このガラパゴス化は車市場や音楽市場など様々な分野で見られる。それが悪いと言っているわけではない。ガラパゴスであることのメリットもたくさんあるし、もちろんデメリットもある。しかし、重要なのはその独自に生まれた日本の"個"を、もっと世界へ見せていくことではないだろうか。

"日本の競馬はクリーンである"ということは外国人騎手の間でよく話されるようだが、これもまさに日本の競馬だから生まれたスタイルである。外国の競馬では相手を不利な態勢に陥れたり、日本では危険な行為とも取れるアグレッシブな騎乗スタイルがしばしば見受けられる。これを危ないからダメだ、騎手として間違っている、と感じてしまったりするのは日本の競馬スタイルを基準にして考えているからであろう。しかし海外ではこういった厳しい状況の中で打ち勝つことが基準とされている。

このような競馬スタイルの違いから外国人騎手に"クリーンだ"と言われるようになったのだろう。クリーンと聞くと響きはいいが、"イージーだ"というようにも捉えることは出来る。確かに激しい駆け引きの中で闘う外国のタフなレースに比べると、国内のレースはイージーに思えるかもしれない。実際にたくさんの外国人騎手が国内のビッグレースで勝ち星をあげている。
しかし、日本の騎手のレベルは決して低くはない。世界に引けをとらないレベルであると感じる。日本の競馬スタイルはどちらかと言うと"相手を潰そうとする競馬"ではなく、"自身がベストを尽くす競馬"である。どんな不利を受けようが、相手にも自分自身にも負けずにとにかくベストを尽くして競馬をしてきた騎手の個の能力は非常に高いものである。

このベストを尽くす競馬のスタイルでぜひとも世界の舞台で活躍し、そして勝ってほしい。勝って日本のスタイルが世界に通用することを証明してほしいのだ。そしてそれを証明できる舞台は凱旋門賞しかないと思っている。

待てば海路の日和あり。諦めずに挑戦し続けていれば、いつかは凱旋門賞で日本馬が先頭でゴールする日が来ると筆者は信じている。