【追憶の名馬面】ダイワメジャー

マイルCS、安田記念、マイルCSと、マイルGIを3連覇したダイワメジャー。懐を見ると、10億円という大金が入っていた。ノド鳴りの一件を考えると、本当によく頑張ったと労いたくなる。

名馬の中の名馬として語り継がれる10億円ホースの仲間入りを果たした彼も、いよいよ引退の時を迎える。第52回有馬記念。前年は第2位、この年は第3位で選ばれたダイワメジャーは、ここで妹と初めて顔を合わす。

母の名を受け継いだ妹、ダイワスカーレット。

青春ドラマ、スポ根ドラマ、奇跡のドラマ、と様々なシナリオを歩んできたダイワメジャーに、最後に用意されていたのは、兄妹ドラマだった。

妹の主戦を務めていたのも安藤だったのである。さてどうするか?もし彼らが姉妹なら、昼ドラ的なものを思い浮かべるところだが、兄は、まだこれからも戦いが続く妹と安藤を結ばせた。

そんな妹思いな兄の最後の手綱を任されたのは、皐月賞で共に笑ったミルコだった。

定位置の番手には、青・白一本輪・白袖のダイワの服がいた。青いメンコを装着し安藤を乗せた妹は、兄のベストポジションである番手からレースを進めた。

一方、兄貴は内側の中団。前を行く妹を見守る様に、最後の大歓声を浴びていた。

3歳の妹は、並み居る古馬の牡に臆する事なく走り、逃げるチョウサンを、堂々と4角出口で捕まえる。しかし、内から白いシャドーロールが、祭りだ!祭りだ!と、突っ込んできた。

あっという間にダイワスカーレットを突き放したマツリダゴッホと蛯名は、ゴールへ向かってひた走る。

スカーレットは、懸命に伸びたが、差は詰まらない。

心が折れかけた、その時。背後に兄の姿があった。中山の坂で、急接近した華麗なる兄妹。兄に押された妹は、坂を登りきると、もう一度マツリダに詰め寄る脚を見せたが、1馬身と1/4及ばず2着。

兄は、これから先、安藤と競馬界をリードして行く妹の姿を、少し離れた3着の位置から見届け、ラストランを走り終えた。

通算28戦9勝。酸いも甘いも味わった競馬場に別れを告げ、ダイワメジャーは第ニの戦いに挑むべく故郷の千歳へ帰った。

父としては、カレンブラックヒル、コパノリチャードといった、自身と同じく短距離で活躍する子供達を競馬場に送り込み、人気種牡馬として過ごしている。今年のNHKマイルカップを制したメジャーエンブレムも、ダイワメジャーの仔。新・マイルの女王になるか?興味は尽きない。

改めて足跡を辿った今、デカイ栗馬、スカーレット一族のボンボン、と抱いていた印象に、ドラマティックな良血馬、という要素を加えた私は、今更ながら彼の虜になってしまっていた。