【追憶の名馬面】キンツェム

デンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの作品に、「みにくいアヒルの子」という作品がある。

アヒルの群れの中に混ざった何とも醜い雛鳥が、実は白鳥の雛鳥だった。という、世界中のチビっ子が一度は必ず目を通す、あの有名な物語である。何の気なしにふとこの物語を思い出した私は、アンデルセンが言うほど白鳥の雛鳥は醜いものなのか?と思い、調べてみた。

見てみると、雛鳥特有の愛くるしさはあるものの、羽毛の色が灰色の様な暗い色で単体でみると確かにこの姿から純白の美しい白鳥を想起することは難しい。この外貌でいわゆるヒヨコカラーのアヒルの雛鳥の群れの中に混ざれば除け者にされるのも無理は無かろう。と真夜中に独り合点した。

ここまで思索を進めたところで、みにくいアヒルの子現象は我が愛する競馬界でも目撃する現象である、という事に気がついた。

競馬をやっていると何年かに一度の周期で、カビの生えたような傍流の血筋の馬がピカピカの良血馬達をバッタバッタと薙ぎ倒す爽快なシーンを競馬を目撃する。その度にカビの生えた薄汚い私は生きる勇気を頂いている。ありがとう、お馬さん。きっとアンデルセンあたりなら「さびた血筋のおウマさん」という童話を拵えることだろう。

例えばどんな馬がいるだろう?と、鳥小屋の様な小さい自室で再び思索を廻らせると、キンツェムという馬が真っ先に思い浮かんだ。

今回は、日本を飛び出し、時空も遡って、このキンツェムという馬に触れてみたいと思う。

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