【追憶の名馬面】キンツェム

記事「【追憶の名馬面】キンツェム」のサムネイル画像

通算成績54戦54勝。この記録は、プエルトリコのカマレロという馬に破られるまで世界一の記録だった。母としては5頭の子供を授かっている。中でも初仔のブタジェンジェは、その血脈を伸ばし、2012年に、若き天才騎手ジョセフ・オブライエンを背に英ダービーを制したキャメロットを世に送り出している。私は、ジョセフとキャメロットが好きで、彼らが現役の頃は、英語も分からないのにネット中継を見ながら応援していた。その愛する馬にキンツェムの血が流れていると知った時、より一層好きになった。いつかオーストラリアまで会いに行きたいものだ。

1887年3月17日。
キンツェムは13歳でこの世を去った。この日、街中の教会では終日鐘が打ち鳴らされ、全ハンガリー国民が彼女の死を悼み、悲しみに暮れた。

キンツェムとはハンガリー語で「私の宝物」という意味である。名の通り、彼女はハンガリー、いやヨーロッパ競馬の宝物になった。

しかし、キンツェムにとっての宝物は、恐らく無敗で掴んだ栄光ではなく、猫とフランキーと一緒に貨車で過ごした日々とブラスコヴィッチから貰った54の花束だった、と私は思う。