【栄光の瞬間】2003、04年マイルCS 黄金色の聖剣

2度目の制覇となった2004年は、デュランダルと池添しか見ていなかった。

この年は高松宮記念とスプリンターズを走り2戦連続2着と歯痒い状況だったが京都のマイルなら話は別。そう思いながらテレビに噛り付いていた事を覚えている。

ゲートが開くとラクティが大きく出遅れた。遠路遥々、英国から参戦してきた彼を置き去りにハナを叩いたのは、デュランダル同様、己に強い信念を持つ男ギャラントアローだった。前年はマグナーテンに絡みつかれたが、今回は悠々と孤独な逃げ。

番手以降は、メイショウボーラーと福永祐一を前に密集し合い、全員で気持ち良さそうに走る逃走野郎を睨み付けていた。

デュランダルは、その密集する馬群から4馬身ほど離れたいつもの位置。道中の鬩ぎ合いなんぞ我、関せず。彼はひたすら刃を研ぎ続けた。

念願叶った単騎の逃げを打てたギャラントアローだったが、4角を回り直線に入ると、睨み付けていた連中に呑まれてしまう。抗うことも出来ず、後方へ沈んでいく彼には、潔く散る男の格好良さが滲み溢れていた。

アローを屠った馬達は、マイル王を目指してヒートアップしていく。待ってました!とピンクのメンコを纏ったメイショウボーラーが抜け出す。桁違いの強さを見せつけた父に続け、とばかりに血気盛んな若者が、差を広げにかかった。それを目掛けて飛んできたのは、ダンスインザムードとクリストフ・ルメール。無敗で桜を咲かせた天才少女が、おじさん達を外から交わし同級生に迫っていく。

ハツラツとした少年少女の攻防が、レース史の1ページに書き記されようとした時、彼は刃を抜いた。

一刀両断。見事な切れ味で、大外から差し切った聖剣は、史上3頭目のマイルCS連覇を達成したのだった。

移り変わりの激しい短距離戦線で、己を貫き通し、結果を出した栗色の名刀。ダービーや有馬記念といったレースには縁は無かったが、その名、そしてその末脚は、競馬が続く限り永遠に語り継がれることだろう。

俺もデュランダルになろう。

相変わらず下流でダラダラしている今、これを放言すれば、空の上にいる彼に怒られるのでまだ言わない。

ゲートを出て、4角に差し掛かる頃、大きな声で彼の名を叫び、全員差し切ってやる。今に見てろ…。

京都のGⅠもいよいよフィナーレ。春の盾で敗れ、秋桜も菊花も愛でられず、Queenのティアラも戴けなかった方も、この第33回マイルCSで、全てを晴らしましょう。