JRA外部委員に桑島孝春元騎手加わる、外部委員導入後「競馬の公正性」は向上したのか?

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JRAは今月20日付けで、JRAの裁定委員会の外部委員について、新たに元地方騎手の桑島孝春氏に委嘱することを発表しました。なお、任期は平成31年6月19日までの2年間となります。現在の外部委員は元中央競馬騎手の岡部幸雄氏、元中央競馬調教師の坂口正大氏、そして地方競馬全国協会公正部長の西澤州平氏の3名。3名の任期は今月19日までとなっておりますが、20日からは3名全員が再任となり、新たに桑島氏を加えた4名での体制となります。

裁定委員会の外部委員の役割りとは?

まず、裁定委員会とは何か?簡単に言えば、競馬の公正性を確保し、馬券購入者の信頼を得るために存在する会です。レースの騎乗や馬の管理に不正があった時や、騎手や関係者の不祥事があった際などに処分内容が裁定委員会によって決められます。

それでは外部委員とは何なのか?これは裁決の公正性の向上を目指す仕組みを担う委員のことを言い、裁定委員会とは別に外部から選ばれた委員によって構成されております。元騎手や元調教師といった、実際に現場で活躍をされていた人物をおくことでより公正な裁決を目指すというものです。

外部委員が導入され「競馬の公正性」は向上したのか?

個人的な見解になりますが、あまり変わっていないというのが正直な印象としてあります。JRAの裁定委員会へ不服を唱える者は、私のような一ファンだけでなく馬主や調教師といった競馬関係者にも多くおり、これは外部委員が導入される以前からおりました。

外部委員の導入前は、JRAの裁定委員会が下す内容は絶対であり、裁決が覆されることなど間違ってもないだろうという絶対者的なイメージがあり、これは今なお定着しているイメージです。ただ、当時外部委員の導入が決まった時はこれからは納得できる裁決も増えてくるだろうと期待をしていたものです。

しかし、導入後も私が裁定委員会はあまり変わっていないと感じるのはこれまでの裁決に対して個人的に不服と感じるものが多くあったことが理由としてありますが、その中でもとくにそれを大きく感じたのは2012年、G1馬も排出している小島茂之調教師がJRAの裁決に対して不服申立てを行った時です。

事件が起こったのは2012年6月10日の東京第8R。ゴール前で先頭抜け出したファイナルフォームが内にモタれ、これを修正するため鞍上の内田博幸騎手がムチを入れますが、今度は外にヨレ、差そうとしていたランパスインベガスと危うく接触しそうになり、ゴール直前でブレーキがかかる形となりました。結局ファイナルフォームは1着でゴールし、ランパスインベガスは3着に敗れるというレース内容でした。

審議ランプが付きましたが、結局着順は変わらず、内田騎手の2日間の騎乗停止処分が決まりました。この裁決を不服に思ったランパスインベガスの小島師は保証金の10万円を払い、裁定委員会に不服申し立てをします。調教師、ましてやG1馬を排出している厩舎の師が不服申立てをするのは珍しく、当時は話題になりました。

しかし、結果は申し立て棄却。当時日刊スポーツが記した記事に棄却された2つの理由が載っておりましたが、それは以下のような理由でした。まず「被害の程度」は加害馬と被害馬との関係で判断されるべきということ。2着が確保できる脚色のところを3着入線する形となった可能性はあっても、妨害行為と関係のない第三の馬と着順が変わったことは被害とは認められない、ということが1つ。

2つめは、加害馬と被害馬の先後関係について。ゴールまでの約2完歩の控えであり、競走能力の発揮に重大な影響があったとは認められないとし、1着2着が入れ替わるほどの不利はないと判断されました。

この結果に対する意見を話すと長くなるので辞めておきますが、私の中では納得のいく結果ではありませんでした。気になる方は当時のパトロール映像を検索していただき、ご自身でご確認してみてください。

この時何よりもショックであったのが、パトロール映像や小島氏の意見聴取を元騎手である岡部幸雄氏や元調教師の坂口氏が間違いなく見ていたにも関わらず、アッサリと棄却されたことです。どのような議論が行われたかなどの詳細は不明ですが、外部委員の役割りをしっかりと果たしてくれていたのか、いささか疑問に感じたことを覚えております。

降着・失格の新基準でラフプレーの増加の懸念も消えておりません。レース以外でも、今年は松田大作騎手が道路交通法違反容疑(無免許および速度超過)で摘発され、裁定委員会からは約半年間の騎乗停止処分が下されましたが、社会的に犯した違反行為にしては軽すぎる処分内容にも思えます。外部委員が導入されてからも、このように未だに多くの裁決に対して疑問に思うところがあります。

今回新たなに外部委員として加わった元騎手の桑島孝春氏は、人柄と競馬に対する姿勢は多くの関係者から慕われ、多くの信望を受けている方です。フェアで堅実な騎乗ぶりにも定評があり、NARグランプリベストフェアプレイ賞も受賞している経歴の持ち主です。今後は外部委員として、何より公正競馬のためにぜひご尽力を尽くしていただきたいと思います。