【アルゼンチン共和国杯2019】オジュウチョウサン、平地重賞制覇へ挑戦再び
美浦・和田厩舎管理の8歳牡馬オジュウチョウサンが再び平地重賞制覇へ向けて今週日曜日東京メインレースに組まれているG2アルゼンチン共和国杯へと出走する。言わずとしれたJRA史上最強ジャンパーであるオジュウチョウサンは障害競走へ転向したてのころこそ勝ったり負けたりを繰り返していたものの、5歳春の中山グランドジャンプを初制覇して以降は障害で敵なしのJ・G1競走6連勝を果たす歴史に名を刻む名ジャンパーである。
絶対王者として確固たる地位を築いたオジュウチョウサンだったが、平地では2歳時に2戦したのみで未出走のまま3歳春夏を終え、秋には障害競走デビューと平地では不完全燃焼であったのは確かである。
そんなオジュウチョウサンに転機が訪れたのは昨年の中山グランドジャンプで5度目のJ・G1勝利を達成した後である。一部ファンの間でもささやかに期待されていた平地再挑戦が陣営から正式に発表された。「競馬はロマン」とも言うように歓迎する声はあるものの、障害レースに出れば負ける気配なし、連勝をどこまで伸ばせるかといった記録を見たい層もおり賛否両論といったところだったが馬主である(株)チョウサンの代表である長山氏の意志は固かった。
平地芝復帰戦となった500万下条件(現1勝クラス)の開成山特別では、それでも期待が大幅に上回り単勝2倍と押し出された1番人気となった。果たして不安の入り交じる中で迎えたレースだったが蓋をあけてみれば2着に3馬身差をつけた貫禄の勝利を遂げ、5年越しに平地芝初勝利を達成した。
確かな手応えを得た陣営だが、いかんせん1勝馬では大きなレースに出ることは難しく、7歳という年齢を考えると徐々に収得賞金を積み上げて大レースに出走というのはさすがのオジュウチョウサンと言えども現実的ではない。そこで白羽の矢がたったのが古馬にとってJRAでの最高峰とも言える競馬の祭典、グランプリ「有馬記念」だった。通常のG1であれば出走すら難しいオジュウチョウサンにとって、有馬記念に用意された「人気投票」というルートはまさに唯一無二の選択肢と言えただろう。
かくして、か細いながらも平地G1制覇への道筋を紡ぎあげたオジュウチョウサンだったが、迎え撃つ強豪たちも当然甘くはなく、稀代の名ジャンパー・オジュウチョウサンといえども歯が立たず9着に敗れ、2018年のシーズンを終えた。
2019年も平地で行くと陣営側は宣言していたものの、復帰初戦に選んだのはJ・G2阪神スプリングジャンプだった。オッズは当然のように単勝1.1倍というプレッシャーもはねのけ優勝。続く中山グランドジャンプに向かっても変わらず危なげなく勝利し、前人未到の自身の記録を更に伸ばした。平地を挟んでも絶対王者に翳りは見られなかった。
その後は、有馬記念同様に人気投票のある宝塚記念を目指すものの体調が整わず回避となり、復帰戦となった前走・六社ステークスでは10着と歯車が合わない展開が続いている。
多くのドラマを作り上げてきたオジュウチョウサンのこれまでを簡単に振り返ってみたが、2勝クラスの8歳古馬であり最強ジャンパーであるオジュウチョウサンがアルゼンチン共和国杯でどのような走りを見せてくれるのか。常識的に考えれば厳しいレースとなるが、それでも「競馬はドラマ」なのか。ぜひ期待してレースを楽しみ待ちたい。