【有馬記念2016予想】グランプリへ挑む女傑3頭

有馬記念が開催される中山競馬場2500mは内回りコースとなっている。スタートから最初のコーナーまでが比較的短く、さらに6つのコーナーがあることから器用さも要求される。また、有馬記念が開催される12月末頃には厳寒期で使い込まれた時計のかかる馬場になっていることが多い。しかも、最近は馬場をソフトにするように馬場造園課が工夫している。

以前の有馬記念では牝馬が苦戦する傾向が見られたが、2008年には牝馬のダイワスカーレットが、2014年には牝馬のジェンティルドンナが1着となっている。まだまだ牝馬に有利と言うにはデータに乏しいが、今回は牝馬に注目してみたい。奇しくも3頭ともがディープインパクト産駒だ。

道悪巧者?マリアライト

今年の有馬記念、牡馬強豪に交じって首位争いを演じてもおかしくない牝馬がマリアライトだ。春のグランプリである宝塚記念は、並み居る牡馬の強豪に交じって8番人気と低評価だった。ところが、1番人気だったダービー馬のドゥラメンテ、当時GⅠを2勝のキタサンブラックといった最強クラスの牡馬を一蹴して鮮やかに完勝したのだ。この事実だけでも有馬記念で無視できない存在といえるのは間違いない。

そんなマリアライトの血統を見ていこう。まずは父が大種牡馬のディープインパクトで母父がエルコンドルパサー。これだけ見てもかなりの血統馬だということがわかる。ただ、この馬の兄弟や叔父母に目を向けると、クリソライトだったりアロンダイトだったりダートの中距離で活躍する馬が目立つ。これは母がパワーやスタミナ系だからではないだろうか。これは母の血統を見れば合点が行く。サドラーズウェルズやリヴァーマンといった欧州の名血がズラリと並んだ血統だからだ。そしてこの影響はマリアライトにも確実に受け継がれている。

マリアライトが勝ったGⅠであるエリザベス女王杯、宝塚記念はいずれもやや重でタフな馬場だった。つまり、マリアライトはタフで力のいる馬場を得意としているのだ。ディープインパクト産駒というと瞬発力があるというのがセールスポイントではあるが、母父の良さを引き出すというのもまたディープインパクト産駒のセールスポイントなのである。

いずれにしても力のいる馬場に向いているというのは有馬記念ではプラスポイントになりやすい。だからマリアライトにとって有馬記念は活躍しておかしくない舞台設定なのだ。事実、去年の有馬記念は12番人気ながら0.1秒差の4着に激走、十分に戦えることを示している。前走のエリザベス女王杯は1番人気ながら6着だったが良馬場で軽い馬場の京都だった。これで人気がガタ落ちするようならむしろ好都合。さらに天気さえ味方すれば春に続きグランプリ制覇も充分期待ができる。

二冠馬ミッキークイーンの懸念点

生産者はノーザンファーム、父はディープインパクト、母ミュージカルウェイの血統である。

ここまでの戦績は11戦4勝、2着5回、連対率にすると81.8%と驚異的数値だ。3歳のときにオークスに出走し見事優勝しているため、有馬記念の距離は問題無いだろう。続く秋華賞では1番人気で1着となり2冠達成となった。

メンバーの揃ったジャパンCでは8着となったが、勝ち馬のショウナンパンドラとは0.3秒しか離されていない。その後は2着2着3着と続いており1着が無いが、前走のエリザベス女王杯では勝ち馬から0.2秒しか離されておらず負けても常に善戦している。6ハロンの上がりの早い競馬もこなしており、ディープインパクト産駒ならではの瞬発力も備えている。

そんなミッキークイーンだが実はデビューから中山競馬場を走ったことが無い。関西では阪神と京都、関東では東京のみとなっているのだ。

どちらかと言うと先行馬と言うより差し馬のため、スローペースになると差してきて届かずと言う展開もあり得そうだ。

牡馬混じりの競争はジャパンカップ1度のみであり、馬券外から唯一漏れたレースというのは気がかりな所。間違いなく牝馬の中では力上位だが、牡馬を相手取ったときにどうなるか。

また、2歳未勝利のときに重馬場で1着となっているが、時計のかかる馬場をこなせるかどうかも注目だろう。

復帰戦で上がり32.8秒を叩き出したデニムアンドルビー

父ディープインパクト、母ベネンシアドール。昨年の宝塚記念のあと屈腱炎を発症したため戦線離脱。前走の金鯱賞は実に一年半ぶりのレースとなった。結果を見れば8番人気の8着と復帰戦にしてはよくもなく悪くもないと言えるが、中身を見ればそう悲観するものでもない。優勝したヤマカツエースからは0.5秒差と若干離されはしたものの上がり3Fはレース最速タイの32.8秒できっちり締めている。

GⅠ戦線を戦ってきた当馬なので復帰明けとは言え本番に見据えていたのは当然有馬記念。金鯱賞は叩きとしては及第点の内容。1000m通過時点で61.5秒のスローペースで穴の先行馬パドルウィールの逃げ切りが決まるかどうかという前残りの、デニムアンドルビーにとっては歓迎し難い展開となった。

これまでの中山競馬場での戦績は一昨年の有馬記念1戦のみ。そこでは16番人気の9着。クラシックを競い合ったメイショウマンボも低迷の時期を続けているがデニムアンドルビーはさらに勝利から遠い。屈腱炎の故障明けながらキレの衰えないところは見せつけた。近年は良馬場に恵まれているが、3歳時には重馬場でも実績を残している。

復活の舞台としては少々ハードルの高いレースになるが、昨年の宝塚記念では強いラブリーデイ相手にクビ差肉迫してみせた。展開が向けばノーチャンスではないだろう。前走に引き続きバルザローナ騎手が手綱を握る。