予後不良。いやな言葉です。わたしが最初に予後不良を競馬場で見たのは、1996年の日経賞。シグナルライトという馬。レース中の骨折で競走中止、残念ながら予後不良になりました。現地で見ていたんですが、まるで「ボキッ」という音が聞こえたかのような衝撃を受けました。サラブレッドは走るために生まれてきた、とはいいますが、それは人間のエゴで当の本人たちは確実に違うだろう、とそのとき思ったものです。
レース中のアクシデント、事故での予後不良は、JRAでも地方競馬でもありますし実際に生で観戦していただけにわかりますが、レースで勝った直後に予後不良になるケースはわたしはこれまで聞いたことがありませんでした。そんなケースが実際に今年あったんですね。やっぱりサラブレッドは走るために生まれてきたのか?と思わせる馬がイギリスにいました。
自身4度目となる重賞制覇を果たしたメニークラウズというイギリスの障害馬です。1月26日にイギリスのチェルトナム競馬場で開催されたG2・コッツウォルドチェイス。道中3番手で追走していた3番人気のメニークラウズは、圧倒的1番人気に推されたシッスルクラックと最後まで競り合い、最後は頭差で勝利。ところが、ゴール板を通過後、いきなりメニークラウズは転倒。大量の肺出血を発症し、突然亡くなってしまいました。アイルランド産でセン馬の10歳でした。
セン馬は長く走らされる、というイメージもありますが、10歳でG2を制覇し、そのまま天国に旅立ってしまったメニークラウズ。ゴールまで文字通り死力を尽くして、かつレース中も苦しかっただろうに、ほかの馬も騎手も巻き込まず、大事故にならないようがんばったように私には思えます。競馬はギャンブルの一面はもちろんありますが、1頭、1頭に多くの人間が携わっており、かつ1頭、1頭にドラマがあるんだ、と改めて感じさせられます。個人的には競馬の考え方、馬への見方が変わるニュースでした。