現代の名伯楽として名前を挙げるに異論は無いであろう藤沢和雄師。師は数多の大レースを勝利しながら、不思議なほど日本ダービーとは縁が無いことで知られている。2002年、2003年で2年連続2着に来ているので、あと一歩運があればと言ったところではあるのだが、あと一歩が果てしなく遠い。そんな師に久しぶりに大きなチャンスが巡ってきたのが、2017年の日本ダービーだ。皐月賞を一叩きしてのレイデオロへかかる期待は非常に大きく、鞍上のC・ルメールとともに悲願のダービー制覇を成し遂げる可能性は十二分にある。
レイデオロは、その血統からして眩い光を放っている。まずは父のキングカメハメハ。2004年の日本ダービーを制し、産駒には2015年の日本ダービーを制覇したドゥラメンテを筆頭に、オークスを制覇したアパパネ、ジャパンカップを制覇したローズキングダムなど東京芝2400mはもはや庭と言っても差支えの無い戦績を残す馬がズラリと揃っている。とは言えダービーまで残る競走馬なら父系には結果を残した種牡馬が並んで当然とも言える。しかし、レイデオロの場合は母系もぜひ注目してもらいたい血統なのだ。
母ラドラーダは現役時代オープンまで上りヴィクトリアマイルへの出走も果たした実績馬で、父が日本ダービー2着で師の管理馬でもあったシンボリクリスエス。そして母レディブロンドも師の管理馬で、競走馬としては異例の5歳という遅さのデビューから無傷の5連勝の後、6戦目にスプリンターズステークスを選択して4着入線後に引退をしたという馬だ。しかも驚くべきことに、デビューから引退まで間が僅か3ヶ月半という短期間なのだ。わずか3ヶ月前にデビューした馬が、古馬の一線級の揃うG1競走に出走をして4着というのは、かなりの素質を秘めていなければ成し得ないだろう。そしてそのレディブロンドの秘めたる能力は後に弟によって日本中に証明されることになる。その弟こそ、2005年のクラシック三冠馬ディープインパクトなのだ。
このように血統構成のどこを遡ってもダービーと相性の良いレイデオロなのだ。自身の戦績も、デビュー後3連勝でG2ホープフルSを制するという申し分のないもの。ホープフルSの前身レースもワンアンドオンリー、ロジユニヴァースとダービーに直結したレースだった。ソエによる前哨戦回避などがあって4戦目はぶっつけで挑むことになった皐月賞では5着と初めての敗北を喫したが、休養明けでダービーの前哨戦と見るには充分な内容だっただろう。
体調さえ整えば世代随一の秘めたる潜在能力で、昨年2着で涙を飲んだ鞍上の、そして名声を欲しいままにしてきた師の悲願を成就してくれるだろう。名伯楽の勲章に、日本ダービー制覇の冠が加わるのも時間の問題だ。