今年の凱旋門賞も日本馬は欧州の高い壁に阻まれ、改めてエルコンドルパサーやオルフェーヴルの突出した能力や、ナカヤマフェスタも含めた欧州の馬場への適性を考えさせられる結果となったが、偶然か凱旋門賞で好走した日本馬は皆サンデーサイレンスやディープインパクトなどのリーディングサイアーの産駒ではない。
リーディングサイアーとは、その国その地域のNo.1種牡馬である。つまりその国や地域の競馬にベストマッチしている種牡馬であり、言い換えるならその条件に特化した種牡馬と言えるのかもしれない。
欧州No.1種牡馬であるサドラーズウェルズ-ガリレオも日本の馬場では良い結果が残せていない。そもそも適性がないだろうと予見していることもあるのか、日本での出走サンプルは多いわけではないが、母の父ブルードメアサイアーとしても日本ではイマイチだし、サドラーズウェルズ代表産駒の1頭モンジューもジャパンカップでは凱旋門賞ほどのパフォーマンスは発揮できなかった。
近年は欧州トップホースが日本のレースに出走すること自体少ないが、凱旋門賞で好走した日本馬が皆リーディングサイアーの産駒ではないのと同様に、ここ10年ほどの日本の中長距離で好走した外国馬もウィジャボードやスノーフェアリーとサドラーズウェルズ系の産駒ではないのである。
エネイブルの父ナサニエルはガリレオの産駒になる。現役時代はイマイチだったナサニエルだが、エネイブルを見るとサドラーズウェルズ-ガリレオの正当な血筋を継いでいる馬と思える。
恐らくナサニエル産駒も、過去のサドラーズウェルズ系と同様に日本の馬場では良い結果が出ないであろうことが想像できるし、欧州で圧倒的なパフォーマンスを見せるエネイブルでさえ日本の馬場ではモンジューのような結果になるかもしれない。またそれが欧州のチャンピオンサイアーであるサドラーズウェルズ-ガリレオ系の正当な血筋とも言えるのである。
一方まだ欧州ではGⅠを勝てていないフランケル産駒が日本で先んじてGⅠを勝ったという点も興味深い。現役時代1600m-2000mで世界最強のパフォーマンスを見せたスピードが日本の馬場でサドラーズウェルズ-ガリレオ系でありながら唯一例外的にマッチしているようである。
一国の馬場に特化していない種牡馬の産駒のほうが、条件を問わないワールドワイドな馬場で同等のパフォーマンスができる馬である可能性が高いと言えるのかもしれない。