今年の菊花賞はキセキが勝利し、ルーラーシップが初年度産駒からG1優勝馬を輩出する活躍を見せました。また、ディープインパクトが母の父として初めてG1勝利を手にした瞬間でもあります。不動のリーディングサイアーとして君臨するディープインパクトの能力が母父としても引き継がれるならば、父サンデーサイレンスから種牡馬の地位を継いだように、ブルードメアサイアーとしてもリーディングの位置を引き継ぐことになるかもしれません。
自身の競走成績、そして繁殖成績までもまるで完璧なディープインパクトに見られる唯一とも言える弱点が、ダートで未だG1級が現れていないという点でしょう。生産者や馬主の意図もあるでしょうし、父サンデーサイレンスがゴールドアリュールを出したように、ディープインパクトからもダートG1馬が出て来る可能性はありますが、打率はかなり低いと見てよいでしょう。人為的に意図をもって配合を繰り返されたサラブレッドの持つ性質は、やはり尖ったものとなりやすく、良くも悪くも得手不得手の顕著に出てくる面は仕方のないことかもしれません。
そんな中、現役時代には3000mをこなすスタミナを武器に中長距離の重賞戦線で戦い抜いた馬ながら、産駒は芝・ダートで結果を出し、距離に関しても短・中距離問わず勝ち星を上げている種牡馬をご存知でしょうか。浦河町のイーストスタッドにて繋養されている2008年の菊花賞馬・オウケンブルースリです。
ジャングルポケットの後継種牡馬として供用されて5年目となっていますが、これまでに集めた繁殖牝馬は2013年23頭、2014年12頭、2015年9頭、2016年8頭、そして今年はとうとう1頭と、種牡馬存続の危機にさらされています。初年度産駒のデビューは昨年からで、2歳時は全頭未勝利に終わったものの、数少ない産駒たちがこの夏から快進撃をはじめました。
8月にはプリモガナドールが3歳未勝利のダートを勝利。これまで地方へ移籍したシュヴァルミニョンなどが勝利をあげていましたが、プリモガナドールによって産駒のJRA初勝利を手にしました。これを皮切りに、9月にはオウケンムーンが新潟芝2000mで2歳レコードタイムを叩き出し、その翌日には同じく2歳馬ドラゴンハートも勝利しました。これまで一向に勝てなかった産駒たちが、わずか一月足らずで3頭が勝ち上がり、舞台もダート1000m、芝2000m、芝1500mとバラエティに富んだ内容。頭数こそかなり少ないものの、父と同じくいきなり化ける可能性を秘めているようです。
現役時代はウオッカやディープスカイとしのぎを削り、7歳まで現役で様々な世代と当たってきたオウケンブルースリ。空手道場経営者のオーナーにとって、命名時点から思い入れの強い馬であろうことは想像に難くありません。血統の多様性以外の観点からも、良い働きをしている種牡馬なので、産駒を今後見かけるようなことがあればぜひ応援してあげてください。