未完の大器という言葉があります。発展途上の大物や、まだまだ底を見せない存在に使うこともありますが、競馬に関して言えば必ずしもありがたい言葉とは限りません。2歳時の成績から大物と評判を受けながら期待ほどの実績を残せていない馬にも与えられることのありがちなこの称号。また、引退とは隣り合わせの競走生活、未完のまま退いた大器はどれだけいたことでしょう。
今週のエリザベス女王杯に出走するルージュバックもそんな中の1頭。2歳時のパフォーマンスから凱旋門賞への夢も描かれました。G1出走のたびに今度こそはと期待されつつも現実はここまで8度の挑戦を経て未勝利のままですが、今回こそは正真正銘最大のチャンスが巡ってきたようです。
ルージュバックの主戦騎手は今期もリーディング争いを演じる戸崎騎手でしたが、重賞戦線、特にG1では力及ばない印象は否めません。前走オールカマーでは北村宏司騎手へと乗り替わり、5番人気1着と見事に一発で結果を出しました。そして今回鞍上に迎えるのは世界でも指折りのジョッキー、日本にも短期来日のたびに注目を集めるライアン・ムーア騎手を確保できました。
もちろんチャンスの理由は鞍上の変更だけではありません。今回のコースは舞台こそ京都で前走の中山とは違えど、距離は同じ2200m。根幹距離では何故かいまいち実力を発揮しきれませんが、反対に1800mなど非根幹距離での良績が目立つルージュバックなので、秋初戦で最高のスタートを切れたといえます。
相手関係では海外実績を引っさげて叩き2戦目となるヴィブロスや、牡馬相手に強い競馬で勝ったスマートレイアーなど怖い馬の参戦はあるものの、クラブの方針から引退も間近に迫っているルージュバック。今回を逃せばG1挑戦へのチャンスはよくて有馬記念しかないでしょう。
これだけの実績馬なので、G1未勝利のまま繁殖に上がったとしても仔に掛かる期待は大きなものとなるでしょうが、やはりG1勝利の勲章が有るのと無いのでは圧倒的に違います。3歳からも秋華賞1,2着馬ともに参戦とフレッシュな風も吹いてきており、非常に面白いレースとなりそうですね。