コスパの良い種牡馬とは?

資金の限られた生産者の立場から見た時、日本広しと言えども“鉄板”と言える種牡馬は中々いるものではありません。ディープインパクト、キングカメハメハ辺りは成績だけを見ればそういう事もできるかもしれませんが、活躍馬が目立つ半面、それ以上に結果を出せなかった馬がいるのも確かな事実。分母を増やすことが出来ればリスクは平坦化できるかもしれませんが、高額な種付け料を捻出するのも簡単ではなく、ハズレくじを引いたでは済まされない大冒険になります。

そういった事態に、さらに拍車をかける可能性が高まったのが大種牡馬サウスヴィグラスの死です。中央競馬でも活躍する産駒はいますが、主だった舞台は地方競馬でしょう。特に、中央ほど賞金の高くない地方競馬において、安定した成績と手の出しやすい種付け料は生産、オーナーサイドへ貴重な選択肢を提供してきました。

サウスヴィグラス成功の要因の一つには、そのスピード能力の高さが挙げられると思います。生粋のスプリンターであるサウスヴィグラスからジャパンダートダービー勝ち馬・ヒガシウィルウィンが産まれたことを考えると、スタミナ面の補完は母がしてくれることの実証となったかもしれません。また、スタミナよりスピードが重宝される時代の流れというのもあるでしょう。この流れは中央・芝でロードカナロアが引き継ぎそうな気配を見せています。

更にもう1点、成功後も種付け料が著しく高騰するようなことがなかったという点も大きなポイントでした。ノーザン・社台ファームで同じようなことが出来たら面白い血統も増えそうなものですが、成績の出ている種牡馬が高騰しないほうが異例であったということです。

数少ない鉄板種牡馬サウスヴィグラス亡き後、コパノリッキー、ホッコータルマエなどが新しい風を吹かせるか、既存の種牡馬がのし上がってくるのか、非常に大きなパイの奪い合いが巻き起こることが予想されます。これまでサウスヴィグラスに流れていた繁殖牝馬も分散することになるため、今年の種付けの動向は要注目です。