どの世界でも、殊更勝負という世界において天敵というのは避けられない存在なのかもしれない。リリーノーブルの場合、それはラッキーライラックなのだろう。近3走は全てラッキーライラックの後塵を拝している。もしも生まれる年がズレていれば、時代のヒロインとして輝いていたのかもしれない。
そんな悲哀さえ漂う馬だが、血統表を見ると日本最大の生産牧場である社台ファーム由来の血統で固められている事が分かる。ノーザンテーストやトニービン、サンデーサイレンスといった大種牡馬の名前はもちろんのこと、エアグルーヴやダイナカールの名前も登場してくる社台ブランドの血統が集約された超良血馬なのである。
肝心の戦績を振り返ってみると、5戦2勝、2着1回、3着2回と馬券圏内を外したことのない非常に堅実なものとなっている(2-1-2-0)。特に新馬戦と2戦目の白菊賞は持ったままの完勝で、どこまで強くなっていくのかと期待された馬だが、ラッキーライラックという天敵に出くわしたがためにその後の3戦は善戦止まりとなってしまっている。
ラッキーライラック同様にこれまでマイルのみの出走だったが、今回は2400mと初挑戦の距離になる。ただ、一気の距離延長を懸念材料として抱える陣営は他にも多く、リリーノーブルに関しては血統背景だけ見れば影響は少なそうだ。ただし、レース中は力んで行きたがる素振りを見せることもしばしばなので、鞍上がどう御していくのかがポイントになるだろう。
なお、父ルーラーシップ産駒は去年に産駒がデビューしたばかりだが、不良馬場の菊花賞を勝利したキセキや、重馬場のきさらぎ賞で3着に入線したダンビュライトがおり、馬場が渋っても苦にしない馬も多い。父のルーラーシップ自身が稍重や重馬場など馬場状態に左右されないタイプの馬だったことからも、そういった部分は産駒にも引き継がれている可能性は高そうだ。母の父クロフネ産駒も同様に、馬場が渋っても苦にしない傾向がある。香港の重たい馬場でも好走実績のあるステファノスや、時計の掛かる馬場の中山牝馬Sを優勝したカワキタエンカなどがいる。
リリーノーブルと全く同じ父ルーラーシップ×母父クロフネという血統で他にロサグラウカ(牝3)という馬がいるが、まだ渋った馬場でのレース経験はない。父と母父それぞれの血統分析となってしまうが、パワフルなフットワークで走るリリーノーブルの走法からも、馬場が渋っても問題なさそうな可能性は高い。
現時点では金・土の東京の天気は曇り時々雨。もしも馬場が重くなれば、俄然リリーノーブル向きの馬場になるはずだ。運を天に任せるなんてと思われてしまうかもしれないが、オークスを勝ち抜くにはそういった運も味方に付けることが大切だ。
血統表に打ち固められた名馬たちの見えない力が、リリーノーブルに運を引き寄せてくれるのではないかと期待もしてしまうのである。