西暦2005年、ディープインパクトが無敗で三冠を達成し、その勢いで有馬記念も狙ったこの年。実はディープインパクトの敗戦の要因を作った1人のジョッキーがいる。デットーリ騎手である。一見何も関係ないように思うかも知れないが、大アリである。これはディープインパクトに土をつけたハーツクライのジャパンCでの2着惜敗に答えがある。
ハーツクライは典型的な追い込み馬。ジャパンカップでは怒涛の追い込みを決めるも、デットーリ騎乗のアルカセットにハナ差屈した。ハーツクライの関係者が、デットーリを連れて来たのは誰だ!!と言ったのは有名な話。問題は次走の有馬記念。東京競馬場より直線が200M以上も短い中山では追い込み一辺倒では勝てない。しかも相手は無敵の3冠馬ディープインパクト。ジャパンCでデットーリ以外の騎手がアルカセットに騎乗していれば、ハーツクライは勝っていた可能性が高い。そうすれば有馬記念も後方一気。しかし、デットーリマジックで敗れた。そこでルメールが先行策を進言した訳である。
ディープインパクトの敗戦は奇しくもハーツクライのジャパンC惜敗が呼び水となったのである。デットーリと言う1人の世界的名手の騎乗によって。
ディープインパクトが唯一敗れた有馬記念を実際に観戦したものとしては、ハーツクライが先行した時スタンドが大きくどよめいた。最初は誰しもハーツクライがかかったと思っていたが、ロングスパートを開始してから、ディープインパクトは?と歓声と悲鳴がいりみだり場内は大騒然となった。直線に向いてもハーツクライの脚色は衰えなかった。実況のアナウンサーが、ハーツクライ・ハーツクライと絶叫しているのが、今でも耳に残っている。
ハーツクライのベストレースと言ってもいいだろう。ディープインパクトも良く伸びていたが、レース後武豊騎手が【今日は飛ばなかったです】と言う言葉が全てを物語っている。このレースはジャパンCでハーツクライが勝っていればこの様な結末にはならなかった。恐るべしデットーリである。日本の競馬史を変えてしまった。