国内外の精鋭が一堂に会する「ジャパンカップ」がいよいよ開催です。かつては、外国の馬のパワーに圧倒された時代もありましたが、近年は日本馬の実力向上と地の利によって圧倒的に日本馬が好成績を残している国際レースです。
その状況に伴ってか、なかなか強い外国の馬のチャレンジが少なくなっているのが寂しいところです。今年も外国馬はカプリとサンダリンブルーの2頭のみとなってしまっています。過去10年の外国馬の成績は「0-0-0-42」と散々な内容。となると、やはり狙いは日本馬というのが素直なところかもしれません。
日本馬では、なんといっても3歳牝馬三冠を制したアーモンドアイが世間的には大注目ですが、ここは古馬の意地を見せて欲しいという意味もあり、私が一番注目したいのは4歳馬のキセキです。
キセキは昨年の菊花賞馬。実力は申し分のないところですが、菊花賞を勝ってからは5戦して9着、9着、8着、3着、3着と連対は一度もなく、物足りない成績に終わっています。確かに着順だけ見れば心許ないですが、その軌跡を辿ってみると、如何にも今回のジャパンカップを制するためと思えてしまうのです。
まず、菊花賞後の香港ヴァース(9着)は外国のG1クラスと対戦し、初めての海外遠征を経験します。菊花賞後は有馬記念やジャパンカップなど国内のG1レースを選択するケースが多いですが、そこで香港ヴァースを選択したのは、レースのレベル感を考えても馬が強くなるための経験として貴重なものだったと言えるでしょう。
そして今年緒戦の日経賞(9着)では、ペースが落ちた2周目の1、2コーナーで中団から一気にハナに立ち、途中から初めての逃げる競馬という展開に。しかし、直線で失速してしまい9着に敗れるという内容でした。この時手綱を握っていたルメール騎手の騎乗には賛否両論ありましたが、ここでの経験は後の毎日王冠、秋の天皇賞の2戦で実ることになります。毎日王冠では2番手、天皇賞では逃げてしっかり3着に粘っています。もともと差し脚質にも関わらず、恐らく得意ではない競馬でのこの結果は馬の地力強化の証明でもあると言えるでしょう。
順番が逆になりましたが、今年2戦目の宝塚記念(8着)では、直線の短い阪神2200mで外々を回り最後内から差すも、脚を溜めれないレース展開に泣かされ突き抜けることはできませんでした。全体のペースが早く、前半の追走に苦労しながらも直線ではメンバー中3位の上がりで追い込んでおり、前も開かなかったので展開が向かなかったと言えるでしょう。
このように、キセキの菊花賞以来の軌跡を辿ってみると、強い馬と戦える力をつけ、不得意な競馬でも結果を残せる地力をつけてきたことが分かります。
そしていよいよ今年最後の一戦、ジャパンカップに参戦です。他の有力馬を見てみると、前回出遅れた大阪杯の覇者スワーヴリチャードは先行戦法を狙っているようですし、前走では伸びきれなかったシュヴァルグランも先行での勝負が濃厚です。外国産駒2頭も切れ味では劣るため、力勝負の早めの競馬となる可能性が高そうです。
今回は強い末脚を持つアーモンドアイをマークしながら競馬をする馬も多そうですし、より早めに抜け出して勝ち切る競馬を目論む馬もいるでしょう。そうなると、自然とペースは平均よりも速くなりそうで、スローペースの切れ味勝負よりは力の要る差し比べの方が得意なキセキにとっては、得意のパターンになる可能性が高いのです。
キセキが秋の2戦の先行戦法から本来の差しで勝負すれば、これまでの軌跡がジャパンカップを勝利するためだったことを証明してくれるのではないでしょうか?奇跡の復活Vとなるかに注目したいと思います。