年末という季節柄、引退レースに有馬記念を選ぶ馬は多い。一昨年の有馬記念覇者であるサトノダイヤモンドもそんな一頭だ。
2015年11月のデビュー以前から注目を集めていたが、それに見合うだけの実力でクラシック三冠を戦い抜いてきた実績馬だ。皐月賞では直線で接触する不利がありながら3着に健闘し、ダービーではハナ差の2着、菊花賞ではエアスピネルやレインボーラインを寄せ付けず2着に2馬身半差をつけ戴冠。続く有馬記念も3歳馬にしてキタサンブラックをクビ差で差し切り優勝し、4歳春の天皇賞春まで複勝率100%という好成績を残す。
レースは中団からやや後方に位置し、最終コーナーから直線で一気に追い込む展開を得意とする。過去のレースでも後方一気の展開が多く、その末脚が炸裂したレースでは例外なく好走しており、その爆発力は世代トップクラスであることは間違いないだろう。古馬となった現在は安定感に陰りが見えるが、10月の京都大賞典では外を通って4コーナーから早めに進出し、各馬の追い込みを力強い末脚で封じ込めて復活Vを果たした。
前走のジャパンCはJ.モレイラ騎手との初コンビで挑み、3番人気に推されるも6着に敗れた。レースは異常とも言える高速馬場でペースも早く、勝ち馬アーモンドアイがこれまでのレースレコードを1.5秒も縮める結果となった。サトノダイヤモンドはスタートこそ良かったが、道中は下げて10番手で進めたことが仇となり、届かずに終わってしまった。
ジャパンCは高速な展開過ぎて前の位置取りで決まってしまった感もあるが、能力的に見てもピーク時と比べるとやはり劣ったという印象が強かった。実際、レース前にも同馬を管理する池江調教師が「ピークと比べると8割方」とコメントしており、全盛期の頃に比べると能力は劣っている点を指摘している。
ただ、上がりが掛かる舞台は合いそうで、中山替わりもプラス。能力の衰えをカバーできる条件ではある。高速決着のジャパンCからの反動はなく、順調にきていると池江師は状態の良さを強調。反動ならむしろ逃げて2着に粘ったキセキの方が心配で、そんな中である程度前の位置につければ見せ場は作れるのではないだろうか。近走はすっかり後方からの競馬が定着してきたが、2016年の有馬記念を制した時のような先行する競馬を期待したい。
今回の有馬記念は陣営にとってもキタサンブラックを撃破して勝ち取った思い入れ深いレースでもある。残念ながらラストランの鞍上は長く主戦を務めたC.ルメール騎手ではないが、引退レースで復活勝利を魅せられるかに注目だ。